過去ログ - テッラ「困りましたねー」フィアンマ「言う程困ってもいないだろう」
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52: ◆2/3UkhVg4u1D[saga]
2012/08/05(日) 15:52:27.62 ID:1/jLkoQr0


『…お前が、俺様を置いてさっさと死んでしまわないように、だよ』


勘違いをしてはいけない、とテッラは思う。
これもまた、きっと彼の気まぐれなのだ。
過剰な期待をして、重荷に感じさせてはいけない。
だけれど、それでも期待してしまうのは、人間の性というもの。
少しは好いていてくれているという自信位はあったが、それだって犬猫と変わらないものだろうとばかり思っていた。
気まぐれに触れてくるのも、触れさせてもらうのも、すべてが気まぐれ。
ただ、必ずしもそうではないのだろうか。少し、期待する。
テッラは途中タオルの温度を確かめ、温くなってしまう度に氷水に浸け、絞り、取り替える。
科学サイドの産物である冷却シップ(所謂冷えピタ)を使った方が楽ではあるのだが、一分一秒も傍を離れたくない。
テッラにとってフィアンマは想い人というだけでなく、命の恩人でもある。
色々と、様々な意味で、自分以上に幸せになって欲しいと、そう願っている。
虚ろで、不安定で、どうにも心がバラバラで。
それでも優しく、しかし誰にも知られないように密かに泣いて悲しみ嘆き。
誰にも頼ってこなかった、孤高の人。
そんな彼が自分に身を預け、世話を任せているということは、多少自惚れても良いのだろうか。
既に想いは伝えてあるし、日頃伝えているのだから、何も怖がる事などないのだが。
フィアンマは時折寝返りを打とうともぞついては、そのまま寝返りを打たずに終わる。
テッラは静かにフィアンマの様子を見守り、一刻も早く体調が良くなって欲しいと願うばかりだった。

フィアンマ「…、…」

テッラ「…はい?」

左方のテッラ、ではなく。
自分の本名を呼ばれ、テッラは首を傾げる。
フィアンマは口元を緩ませ、乾いた唇を舐めた。
何か自分が出演していて、且つ楽しい夢を見ているらしい、とテッラは判断した。
いたく喜ばしい事だ、と感じ取りながら。

テッラ「…私は死にません。約束します。出来る事ならば、寿命で死ぬその時までここに留まり、貴方を支えます」

願掛けの長い髪。
林檎のような甘い匂いを放つさらさらとした髪を撫で、タオルを取り替え、テッラは目を伏せる。
自分の寿命では、彼には追いつかない。どうしても、彼を置いていってしまう。
『光の処刑』が完成したその時は、どうにかすることはできないだろうか。どうにか、したい。
そう願い、テッラは何度も、飽きずにタオルや氷水を取り替えるのだった。





熱心且つ献身的な看護を受け、ベッドから逃げ出さず汗をかいたフィアンマはだいぶ体温が正常なそれまで下がり、だるそうながらも目を覚ました。
薬を服用していないにも関わらず、よくなったところを見ると風邪の中でもそんなに重病な部類ではなかったのだろう。
しかし、完治したということではなく。
だるく、汗はかいたものの、シャワーを浴びる事が出来る程には体調は良好でない。

テッラ「目が覚めましたか」

フィアンマ「…あぁ。身体がどうにも怠い」

テッラ「何か必要なものはありますか?」

フィアンマ「そうだな…身体を拭いてくれ」

テッラ「…、…身体、ですか」

フィアンマ「嫌なのか?」

テッラ「いえ、むしろ貴方が嫌なのかと思いましてねー」

フィアンマ「嫌ではないよ。お前相手であれば」

甘い睦言のような台詞なのに、雰囲気に甘味は付加されない。
緊張した様子を見せるテッラの表情を眺め、ベッドに手をついて、フィアンマは起き上がる。
そして、胸元に手をかけて、今にも脱ぎ始めそうな体勢で誘った。

フィアンマ「…脱がしては、くれんのか?」

悪魔の甘言の如きいやにいやらしい響きを帯びた声音に唇を舐め、テッラは頷いて、フィアンマの服へと手をかけた。


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