過去ログ - テッラ「困りましたねー」フィアンマ「言う程困ってもいないだろう」
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◆2/3UkhVg4u1D
[saga]
2012/07/22(日) 03:48:22.31 ID:Wo68V/rd0
金色の瞳を、壁掛け時計に向け、フィアンマは一層辟易したような表情を見せた。
時刻はまだ夕方にもなっていない。
長く生きてしまえばしまうほど、一日一日の価値は無くなる。
短い時間と限られているからこそ、人生は輝いて見えてくる。
フィアンマにとって、毎日とは堕落しないよう自らを戒める檻であり、楽しみはほとんど無い。
かつて拷問や殺人などといった凶行に快楽を見出してみようとも考えたものの、フィアンマにそのような猟奇的な趣味は似合わなかった。
テッラはそんなフィアンマをどうにか遊興に興じさせてみようとも考えるが、そもそも自分があまりそういった行為に精通していない。
彼は敬虔なローマ正教徒として、神父として、今も聖職者として清く正しく生きているのだ。
宗教的、魔術的知識を教えるのであればまだしも、遊びを教えられるほど、不真面目に生きてきてはいない。
となれば真面目な会話をするのも悪くは無い。だが、取り立てる程の話題は無く。
まして、そうは見えずとも、テッラは緊張している。フィアンマが怖いというわけではない。
前述した通り、フィアンマの事を好いているからだ。
どのような我侭を言われても笑顔で受け入れてしまうほどに。
無償の愛などという小綺麗なそれよりも、むしろ情愛と言い切ってしまった方が相応しいかもしれない。
テッラ「…退屈ですねー」
フィアンマ「何か良い暇潰しは考えつかんのか?」
テッラ「トランプは貴方がいつも全勝してしまいますし、他のボードゲームで貴方の知的レベルには敵いません」
フィアンマ「卑屈だな」
テッラ「事実です」
フィアンマ「何か話を聞こうにも、お前も俺様も外に出なくて良い方の人間、話題もあるまい。…チェスに付き合え」
テッラ「構いませんよー」
フィアンマは億劫そうに立ち上がり、長テーブルの上にチェス盤を置き、駒を並べていく。
テッラはその行動に対し、自分の座る椅子を反対側に置くことで協力した。
テッラに容赦してか、フィアンマの側にクイーンは無い。所謂ハンデ。片手落ち。
フィアンマは先攻をテッラに譲り、椅子に座り直して優雅に右脚を上にして脚を組んだ。
壁掛け時計が、無機質に時を刻んでいる。
テッラはしばし悩んだ後盤上の駒に手を伸ばし、移動させた。
フィアンマ「……お前は、今でも俺様の事が好きか」
テッラ「えぇ、大好きですよ」
一欠けらのパン。
導かれた教会。
フィアンマの気まぐれの中の気まぐれが引き起こした幸福。
テッラはそれらを思い浮かべながら、頷いた。
否定することなく照れ隠しも行わず好意を伝えてくるテッラの声に、フィアンマは小さく笑った。
彼にしては珍しく、人を馬鹿にしたような調子の無い笑顔だった。
笑みを浮かべたまま、フィアンマは駒を手にする。
霊装の役割すら果たす、『神の子』の如き右手で。
フィアンマ「…俺様も、お前の事は嫌いではないよ」
テッラ「…そうですか」
フィアンマの一言に、テッラは薄く微笑んだ。
好きな人からは、嫌いと言われるより、嫌いではないと言われた方が良いに決まっている。
テッラは、フィアンマにしてみれば短い時間(じんせい)を全て、フィアンマの為に捧げると決めている。
正確には、自分に希望をもたらしてくれた『―――――』に対して、というべきか。
本来神に捧げるべき命ではあるものの、神への想いすら凌駕してしまうほどに、テッラの愛は重い。
そんな愛を注がれつつも、フィアンマは一切気負わない。
彼には何も無い。バラバラになった心に、単純な感情の色は浮かばない。
大切な花に水を遣り、翌日には生けるでもなく千切りとって捨ててしまうような、そんな歪んで不安定な感情はあれど。
だからこそ、テッラはフィアンマからの情愛を期待しない。
フィアンマが幸福であれば、テッラも幸福なのだから。
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