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2012/07/26(木) 20:02:25.68 ID:6ymGr43Y0
二章 さよならだけが人生か
事前に用意した地雷は役に立たなかった。計算は外れ左脚がもがれた。
九九八一回分の戦闘シュミレートは無駄な努力だったと証明された。
反射的に放った電撃。
だが、相手には届かない。
不自然にねじ曲がった電撃は発信源の己が身へと牙を向く。
瞬時のことに回避は間に合わず、バチンッ! と落雷の音が骨を通して全身に反響した。
「がぁッッッ……!!」
衝撃のあまり意図せず腹から悲鳴が漏れる。まるで、潰れた蛙の鳴き声。
小鳥の囀りには程遠く、安易な扱いしかされないモルモットになんと似つかわしい響きだろうか。
「……はっ、はっ」
浅い呼吸に両肩が上下する。呼吸するのも辛い。
空気が行き来する度に気管支が焼ける。
痛い痛い苦しい熱い。じわりじわり。色々なものが少しずつ削られていく。
体力は根こそぎ奪われ左脚は太ももから先が切り離された。
これ以上はもう無理だ。
戦う事はおろか歩くことすら困難。
切り札が敗れた時点で今夜における実験の勝敗は決し、答えが定まったならば自分の抵抗に意味は無く――何もかもが無体。
本能で理解する。
実験終了まであと少し。寿命を迎えるまであと少し。
胃中の物が逆流しなかったのがせめてもの慰めか。
着用している制服は既に己の血液で汚れており、更に吐瀉物で上塗りしてしまうのは流石に気が引けた。
多少は綺麗なままで逝きたい。
(だって、せっかく、お揃いの服を着ているのですから)
地面へと倒れる最中、自然と左下腹部へと手が伸びた。
最期に。左下腹部にベストにつけた缶バッチの感触を確かめたくて。
微かに残された力を振りしぼり――、
手のひらが宙を切る。
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