過去ログ - 超電磁砲は夢をみない
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2012/07/26(木) 21:20:58.11 ID:tNPAZWFV0
ミサカネットワーク。
妹達(シスターズ)を個から群へと押し上げる電子ネットワークを指す其処は、
超能力者量産計画と絶対能力進化計画によって生み出された、
ミサカ〇〇〇一号からミサカ二〇〇〇一号までの総勢二万飛んで一人のミサカ――御坂美琴のクローン体の「識別名」――よって形成される。
すべての「ミサカ」の記憶・体験・思考・知識がそれぞれのミサカに自動的に「共有」される仕組みで、
コンソールとして二万人の下位固体をまとめ上げるために製造された上位個体・最終信号(ラストオーダー)とて例外ではない。
ミサカの群としての枠に入らない唯一の例外は、第三次製造計画にて誕生した番外個体(ミサカワースト)ただ一人。

故に、番外個体は妹達の中で最も自由を謳歌している個体だと自負する。
 
たまたま目に映った高校生の恋愛ドラマを惰性で見つづけている最近の習慣も、
ラッシュ時に乗車した際のモノレールの混雑振りにウンザリした朝も、
よいこの代表、我らが打ち止め(ラストオーダー)ちゃんの寝息を邪魔しないように
芳川桔梗や黄泉川愛穂、そして第一位と静かにひっそりと乾杯を交わした夏の夜のビールの味も。
番外個体が自身で、見、聞き、感じ、考え、体験し、学んだことである。

身に着けた習慣、あらわした感情、味わった味覚。
それらは誰にも共有されず、記憶/体験/思考/知識は彼女だけのものとして脳に体に取り込まれ蓄積される。
 
趣向も妄想も思うが侭。
何者にも恥じることなく遠慮することなく、己のためだけを考え、生きることができる。

第一位回収の名の下、研究者らによって、「ミサカネットワークに蔓延る負の感情を拾いやすい」性質を付与された経緯があるが、
他のミサカが持ち得ない『自由』を手に入れた代償と思えば「まあ、仕方ないか」と普段ならば笑ってやり過ごせる程度のことだ。

そう、普段であれば。

「………………朝、か」

重たい眼に朝日がうつる。
外から聞こえてくるラジオ体操の伴奏がわずかに私室まで漏れてくる。
夏休みを向かえ、近くの公園にて児童達が元気に朝の体操に励んでいるのだが、寝起きで思考が定まらない番外個体には関係のないことだった。 
シンと静まり返った室内でその音声は、実際よりもやけはっきりと聞こえたきた。


 
 新しい朝が来た

 希望の朝だ 



「――――ぎゃっは」

思わず声が出た。
 
朝日を見てそう思うのか。
絶望の果てへと沈みいく夕日に酷似した、痛々しい白の太陽を見て、そう思うのか。

「馬っ鹿みたい」

可笑しい。 可笑しすぎる。
率直な感想が喉を通して空気中へと放たれた。

「くくっ…、ははっ」

笑い声とともにべっとりとした不快な感覚で覆われている目元を両手でぬぐう。
両の手には、いつの間にか枯れ果てたらしい水分の残骸がまとわりついた。
自制しなければ、今にでも高層マンションの自室の窓から身を投げ出したくなる。
激痛を伴う衝動が全身を駆け巡り最悪で最高の朝がやってきたことを自覚する。

何が、希望の朝なのだろう。

「く、ははっ! あはは!」

狂ったように笑う女だな、と言った白い頭の少年の言葉は実に的を得ていた。
彼女は嬉しい時も楽しい時も寂しい時も怒った時も狂ったように笑う女で、

「ふふ、ふはは。ミサカにとったら、『最悪な朝』だっての!」 

目が覚めたときに死んでしまいたくなる、切なさで全身が押しつぶされる『夢』を見た朝でさえも、笑うことをやめない女だった。



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