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2012/07/24(火) 11:32:31.29 ID:d42ujU9K0
序章 金平糖の空
母は常日頃、それこそ四六時中。
呑気で陽気で楽観的な人間だと他人からは思われているだろう。
アルコールを体内に流し込めば百発百 中酒に飲まれること間違いなし。
「ダメな大人」と言えなくもない、三十路をとうに過ぎた女。
曰く博愛主義を掲げる彼女は、確かに情を注ぐ対象が多いと言えるだろう。
花の香りのフラグレス。
体にフィットする皮パンツ。
水の中を掻っ切るように泳ぐ瞬間。
ごつごつとした掌で己の身体を抱き締める男。
本人の遺伝子を九割以上受けついだのでは? と思いたくなるほど彼女の面影そのままに生まれてきた娘――。
忙しなく過ぎる日々の中で彼女は常に愛を謳った。
日常を形成するパズルのピース全てを、慈悲の母性で満たそうと生きる人。
それが美琴の中で形成された母の輪郭だ。
自他ともに認める愛多き女がこよなく愛するものは。
多分、自分でも父でも。
勿論、アルコールでもない。
きっとそれは。
金平糖が散らばった満天の星空に違いないのだと、一四になった美琴は信じて疑わない。
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