過去ログ - 春香「リボンを結んで」〜オーソドックスガールズストーリー〜
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162:1 ◆6VUvxtY276[saga]
2012/08/02(木) 20:48:02.96 ID:5P+gS2El0


***


 BGMが流れるが、四条貴音は微動だにしない。曲は『DREAM』。たまに響と美希がソロのステージで歌う
事がある人気曲だが、やはり貴音も歌えるのか。しかしこの曲は前奏が長く、ダンスにしろポーズにしろ
アピールがし放題なのに勿体ない。代わりに貴音は目だけをもの凄い速度で動かして会場を確認している。
すると一瞬こちらを見て驚き、そしてにこりと微笑んだ。何だ?何か面白いものでも見つけたのか?


 ♪「始め」は皆一瞬の刺激 銃弾に撃たれた様だった♪

 ♪熱く燃えてく火花みたく 思いに焦がれてる想い立ち向かえ♪


「え、この歌い方って……」

「この空に届くような、まっすぐ澄んだ綺麗な声は……」

 最初から日高舞のコピーで来るとは思わなかったが、代わりに今の世代はほとんど知らないであろう
マニアックな所を攻めてきた。まだアイドルという概念が確立されていない頃、キラキラした世界に憧れた
女の子達の中に、春の野原を空高く飛び回るヒバリのような声で歌う女の子がいた。日高舞の陰に隠れてあまり
目立たなかったが、その澄んだ歌声に魅了され今も憶えている人間は少なからずいる。

「なかなか上手くコピー出来ているじゃないですか。これは四条貴音からの音無さんへの贈り物ですよ。
 あの子は日高舞だけでなく、当時のアイドルまでしっかり観察して勉強していたんですね」

「ほんとよく似てますよ音無さんに。思えば私、この歌声に憧れてアイドルに興味持ったんですよね。
 まわりの友達はみんな日高舞に憧れていましたけど、私は音無さんの歌の方が好きでした」

 俺と律子の言葉に、音無さんはハンカチで目を拭っていた。スタッフで集まるとたまに当時の話をすることが
あるが、音無さんは恥ずかしがってあまり話をしてくれない。自分は大したアイドルではなかったといつも
言っているが、少なくとも貴音も尊敬しているみたいですよ。

「うう……、ごめんなさい四条さん……、私もうあの頃みたいに綺麗な心を持ってないんです……。お酒も
 ガンガン呑みますし下ネタもバンバン飛ばしますし、最近は事務所の子達でイケナイ妄想を……」

 ……どうやら音無さんの中では複雑な感情が渦巻いているらしい。とりあえずそっとしておこう。

「それよりプロデューサー気付いてますか?彼女のパフォーマンス、歌は音無さんですけどダンスとビジュアル
 は西園寺美神ですよ。どうやら序盤はコアなファンを狙ってアピールしているようですね」

 ああ、どうやらそうみたいだな。審査員が全員懐かしそうな目で見ているよ。ファンの中でも分かる奴は
分かるみたいだな。しかしいつの時代でも、いいものはいいみたいだ。そこを上手く切り取ってコピーして
やがる。これは相当ファンの反応も研究しているようだな。現に会場は盛り上がっている。




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