過去ログ - 恒一「『ある年』の3年3組の追憶」
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10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/06(月) 21:09:08.29 ID:4DOG5YTr0

「ご、ごめんなさい。あなたのことじゃないの。
はっきり思い出せない、自分のふがいなさにね・・・」

「赤沢さん、あまり思い詰めても」

「これも対策係の仕事だし、私がちゃんとしないと」

「対策係?」

やっと本題に戻れた。私はさっそく自分の仕事と
恒一くんに守って欲しいことを説明しようとしたその矢先、
突然、ゆかりが待ったをかけた。
一緒にいた、女の子のような男子生徒、望月も慌てて止めようとする。

「ちょっと、人がせっかく説明しようとしてるのに・・・」

「実は・・・」

ゆかりと望月の説明に、私は頭を金槌で殴られたような感触に陥った。

多佳子は登校してすぐに、ゆかりと風見くんに事情を説明しようとした。
しかし、ゆかりは足を挫いたために遅れて登校し、
風見くんは、恒一くんを質問攻めして取り囲む男子生徒たちを
まとめるのに必死でそれどころではなかった。
そして多佳子が二人にやっと話した時には、恒一くんは既に接触、
つまり、もう手遅れになってしまったのだという・・・

「何それ!ったく・・・!一日休んだだけでこのざまか!」

まただ。また私は感情をコントロールできずに怒鳴ってしまう。
ゆかりと望月が、思わず震え上がっている。
そして私は、こんなことを口にした自分をすぐに恥じた。

「体調管理もできず休んだお前が、何を偉そうに言えるのか」

「対策係失格だね」

「もし誰か死んだら、みんなあんたのせいよ」

そんな幻聴が私の周りを埋め尽くす。

やめて、やめてよ。私は誰よりもクラスのために・・・!

「じゃあ、また」

そんな私のこともつゆ知らず、恒一くんは校門に向かって走り去ってしまった。
よりにもよって、後を追いかけるように。
そう、今年の『いないもの』となった人物、
“ミサキ・メイ”を・・・

「くっ・・・」

唇から血が出そうになるくらい、私は悔しさを噛みしめた。

もう後戻りはできない。
3年3組の中で辛うじて保っていた均衡が、崩れようとしていた。


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