過去ログ - 恒一「『ある年』の3年3組の追憶」
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123:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/06(月) 22:41:55.85 ID:4DOG5YTr0
◆No.12 Kazue Sato
合宿に参加したクラスメイトたちが、
災厄によって過去に例を見ない悲劇に見舞われた8月8日。
この日私は、両親と小学生の幼い弟の家族四人で、
夜見山から遠く離れた、東京に程近い遊園地でレジャーを楽しんでいた。
最近では、遊園地じゃなくてテーマパークとか言うみたいだけど、
ここでは、長年呼び慣れた遊園地とする。
実はこの遊園地、去年の修学旅行で一度行ったことがあるのだけれど、
その時は近くのリゾートホテルで一泊した後、
午前中に数時間遊んだだけで切り上げ、
午後は東京タワーを見学して、夕方から夜にかけて夜見山に戻るという、
とんでもなく忙しいスケジュールだった。
そのため、ほとんど楽しむ暇もなかったため、
今回はそのリベンジも含めて、じっくり遊ぼうということになったのである。
家族旅行とは言え、みんなが合宿に行くのに、
自分の家だけ遊びに行くのは、少し後ろめたさもあったし、
綾野さんの一件があったため、車で夜見山市を抜けるまでは生きた心地がせず、
これから遊びに出かけるのにどうかしたのか?と両親に不審がられた。
まだ夜明け前の出発だったため、災厄の恐怖がより増していたと言える。
しかし、いざ夜見山から脱出し、
電車や新幹線を乗り継いで目的地の遊園地に到着すると、
今までの心配事が嘘のように晴れ晴れとした気分になった。
ここは夢と魔法の世界。現実の嫌なこともみんな忘れて、
家族四人は思い切り楽しい一日を過ごしたのである。
遊園地に着いたのは、お昼近くになってからのこと。
夏休みということもあって、入園制限が心配されたけど、
案外色々な観光施設にお客さんがばらけたのか、無事入ることができた。
初めてこの遊園地を訪れた弟は、
絵本やアニメ映画に登場したキャラクターたちに大興奮している。
長蛇の列でも文句を言わず、記念写真まで撮れて大喜びしていた。
こんなに幸せそうな弟の笑顔は、今まで見たことがない。
それにこの遊園地が素晴らしいのは、
従業員さんの細やかなサービス精神である。
夜見山にも一応遊園地はあるが、どことなく重苦しい市内同様、
寂れてうらぶれた感じがする。
従業員にもその傾向があり、仕事をほったらかしでぺちゃくちゃしゃべっていたり、
観覧車の監視員は、ぐうぐうといびきをかいて寝ている有様だった。
とてもじゃないが、月とすっぽんのレベルじゃない。最悪だ。
それに比べると、ここの従業員は格が違う。
お母さんが、園内を掃除している人にお土産屋さんの場所を尋ねると、
その人は、すぐ丁寧に質問してくれた。
他にも、レストランやら乗り物やらで親切な応対をしてくれた人ばかりで、
とても気持ちよく過ごせたと思う。
とは言え、この遊園地はさすがにどこも混んでいる。
やっぱり、オープン15周年のイベントを開催していたからなのかな・・・
絶叫マシーンやお化け屋敷は待ち時間がとんでもなく長く、
弟が私に似て怖がりなのでみんなパスして、
パレードやショーといった、乗り物より見る物中心であった。
遊んでいた時は忘れていたとは言え、
いくら夜見山市外であっても、絶叫マシーンで振り落とされたり、
災厄の呪いに引き込まれなくても、
お化け屋敷で本当に1000人目の幽霊にされたらたまったものではない。
そんなことを本能で感じ取ったのだろうか?
夕食は、修学旅行の時に食べ損ねたカレーをおいしく頂き、
夜のパレードや花火を満喫した私たちは、
ファミリールームの客室でゆったりと過ごしながら、眠りに就いた。
ちょうど同じ頃、夜見山であのような大惨事が起きたことも露知らずに・・・・
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