過去ログ - 恒一「『ある年』の3年3組の追憶」
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130:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/06(月) 22:46:40.32 ID:4DOG5YTr0

そんなどうでもいいことを考えながら、
俺たちは『イノヤ』に向かって歩き出した。
病院からだけでなく、学校にもほど近いこの喫茶店は、
アクセスもいいことから、時々俺たち夜見北の生徒のたまり場になっている。
ウェイトレスの姉ちゃんも結構美人だし・・・

もう『イノヤ』が目の前に来たところで、
俺たちは歩道で誰かうずくまっているのを見つけた。
女の人だ。お腹を押さえて苦しそうに呻いている。
これってまさか・・・

「米村!お前、公衆電話探して119番しろ!
その間に、この人の面倒は俺が診る!
・・・さ、大丈夫ですよ。落ち着いて深呼吸して下さい」

その女性の背をさすりながら、水野は手慣れた手つきで介抱し始めた。
一方、こんな時に限って他に通行人がいない。
いきなり、公衆電話って言ったってどこにあるんだよ・・・
そうだ!目の前に『イノヤ』があるじゃないか。
背に腹は代えられない。
俺はカランカランとベルの音が鳴る『イノヤ』のドアを乱暴に開けると、

「すみません、道ばたで人が倒れているんです!」

と言い、例のウェイトレスさんに頼んで、迷惑を承知で電話を貸していただいた。
飛井町の『イノヤ』というだけで、電話の相手もわかったらしい。
病院からさほど離れたところではないため、救急車もすぐに到着し、
その女性を乗せると、すぐに病院へ向かって走り出した。

あっという間の出来事だった。
俺はしばらく突っ立ったままだ。と、水野に視線を移す。
なんでこいつ、あんなに慣れてるんだ?
オロオロ慌ててばかりいた俺とは大違いだ。

『イノヤ』からの帰り道、俺はその訳を水野に聞いた。
すると、あいつはこう返事した。

「ああ・・・前はよく姉貴の特訓に付き合わされたからな。
まさか、こんな所で役に立つとは思ってもみなかったけどな・・・」

そうか、看護婦だった水野の姉ちゃんの影響か。
また、辛いことを思い出させちまって悪いことしちまったな?
すると、水野はさらに続けた。

「俺さ。姉貴みたいに看護士を目指そうかな?
別にバスケの選手になろうと思ってなかったし、
それよりちゃんと、人の役立つ仕事をしたいと思うんだ。
いつも夜勤明けで帰ってくる姉貴を見ると、辛い仕事だってことは、
十分わかるけどさ・・・」



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