過去ログ - 恒一「『ある年』の3年3組の追憶」
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132:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/06(月) 22:50:35.89 ID:4DOG5YTr0
◆No.18 Naoya Teshigawara
風見が、死んだ。
小学3年生の時から同じクラスで、いや、近所づきあいだから
正確には小学校に上がる前から、それこそ物心ついた頃からの幼馴染を・・・
俺は、殺した。
「風見?おい、風見!?ふざけんなよ・・・おい・・・
ちくしょう!ちくしょう、ちくしょう!うわぁぁぁ!!!」
頭から血を流して動かない風見。
俺は拳を地面に叩きつけ、声が潰れるまでひたすら叫び続けた。
望月は、俺が風見を二階から突き落とした後、
一度自分の部屋に来て俺を探していたと言う。
サカキも、さっきまで歩き回る風見を見たけど、
“別の事故”に巻き込まれてこんなことに・・・と話していた。
でも、そんなの信じられなかった。
あんなことをした俺を庇うために、わざと嘘を言ってるに違いない。
現に、二人とも目を伏せていた。千曳先生も何も語ろうとしない。
どうしてあの時、俺は風見に疑ったりしたのだろうか?
心当たりを探すと、五年前に起きたある事件が全ての発端じゃないかと思えてくる。
俺の家には二人の姉ちゃんがいるけど、
実はその上にもうひとり、隼人って名前の兄ちゃんもいた。
過去形なのは、五年前に事故で死んじまったからだ。
ロックが大好きだった兄ちゃんは、愛用のエレキギターをいつも持ち歩いていて、
俺もよく兄ちゃんの演奏を聴いたものだ。
ある日、ギターの練習を始めるために電源コードに繋げようとした時、
兄ちゃんは足を滑らせてコードが躰に絡みついてしまい、
その直後、全身から火花が飛び散った。
すると、兄ちゃんは棒のように倒れたと思うと、ピクリとも動かなくなった。
感電して、呆気なく死んでしまったのである。
そして、その事件は俺の目の前で起きた出来事だった。
当時小学生だった俺は、どうすればよいかわからず、
ただひたすら泣き出すしかなかった。
俺だけでなく、姉ちゃんたちにとっても、自慢の兄貴だった兄ちゃんの死は、
家族全員の心に大きな傷を残した。
そして俺が3年3組になった直後、俺は気づいたのだ。
当時、兄ちゃんが3年3組の生徒だったこと。
そして、兄ちゃんは災厄に巻き込まれて死んだことに・・・
それ以来、俺は表面には出さないものの、常に災厄から怯える毎日が続いた。
サカキに「『いないもの』の相手をするのはよせ!」口酸っぱく言ったのも、
俺が人一倍、3年3組の呪いを恐れていた裏返しだ。
夏休みに海水浴に出かけたのも、赤沢の水着が見たいからって理由もあったけど、
少しでも夜見山を離れたかったからというのも大きかったし、
松永さんのテープを聞いてから、『死者』が誰なのか異常に執着し始めたのも、
誰より災厄に対して、過敏になっていたからに違いない。
そして、その行き着いた先が、風見を突き落として殺すという、
最悪の結末になってしまったのだ・・・
災厄で頭がおかしくなっていたからとか、そんな理由じゃない。
俺は、最後の最後であいつを信じてやれなかった。
心許し合った友にまで、疑いの目を向けた俺が最低の男だったんだ。
思えば俺は、災厄を怖がっているくせに、テープを探す時から、
自分一人で3年3組を災厄から救うつもりになっていた。
とんだ思い上がりだ。
千曳先生に相談していれば、違う方向に話が進んだかもしれない。
けど、宝探しのような気分を味わいたくて、
俺とサカキ、望月、それに見崎の四人だけで事を進めた。
そして、関係ない綾野と小椋も巻き込もうとしたから・・・
小椋があんなことになったのも、俺が話したせいだからじゃないか?
今になって、そうも思えてくる。
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