過去ログ - 恒一「『ある年』の3年3組の追憶」
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147:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/06(月) 22:59:02.30 ID:4DOG5YTr0
そんなこんなで話をする内に、
歩道の反対側に見慣れた人影が二つ見えた。
あの眼帯は間違いない。見崎さんと榊原君だ。
二人は私たちの存在に気づかなかった様子で、そのまま通り過ぎていった。
ふと、私は辻井君をからかってみたくなった。
「ねぇ?あの二人は、付き合ってるのかな・・」
「ど、どうだろうね。二人は『いないもの』同士だったから、
その間にすごく仲良くなったことは間違いないみたいだけど」
「辻井君、私ね。私もあの火事の時、もしかしたら惚れ直したかも・・・」
「なっ・・・!何を急に!」
「なんてね。うふふ・・・」
でも、それは本心だった。
あの時手を差し伸べてくれた辻井君は、
それこそ私の中では王子君以上に王子らしかった。
「でも、あの時眼鏡をかけてない辻井君って初めて見たの。
眼鏡を外すとあんな顔になるんだって・・・」
「うーん、自分じゃよくわからないんだけど。そうだ!
柿沼さんも髪型変えたんだし、僕もイメチェンしてコンタクトにしようかな・・・」
「ダメ!それだけは絶対ダメ!」
「え?どうして?」
「・・・やっぱり眼鏡をかけた辻井君も素敵だなって・・・」
今度は半分は本当、でももう半分は嘘だった。
眼鏡を外した辻井君があんなに美形だったなんて、思いもよらなかった。
うちのクラスはいわゆるイケメンが揃っているけど、
お世辞抜きで眼鏡を外した辻井君の凛々しさは、半端じゃない。
あれでは、他の女の子が黙ってはいないだろう。
ライバルが増えては困る。
眼鏡を掛けていない辻井君は、私が独り占めしたかった。
ぎゅっと辻井君の手を握る。
あの時、辻井君に抱きつくという大胆なことをしたくせに、
手を握っただけで、頭の中が真っ白になるくらい、恥ずかしくなってしまう。
そんな私に対して、辻井君は私よりずっと優しく手を握り返してくれた。
お互いの片手を握りしめて、私たちは共に歩き出した。
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