過去ログ - 恒一「『ある年』の3年3組の追憶」
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22:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/06(月) 21:19:53.26 ID:4DOG5YTr0

思えば、私が演劇部に入る過程や、部活での出来事は色々あったなぁと、
ふと、これまでの出来事を顧みてしまう。

走り幅跳びで顔から突っ込んだり、授業でもよく居眠りしたり、
私は勉強も運動も苦手で、これといった取り柄のない子だった。
おまけに背は低いし、胸はちっとも大きくならないし、
お先真っ暗だな〜と思っていた私を変えたのが、
小6の時に、学校の講堂で見た演劇教室だった。

まず座長さんらしい人が簡単な説明をしていたけど、
その後の舞台では、まるで別人のような迫真の演技を見せ、
私は思わず身を乗り出してしまった。

ステージの上では、誰もが変わることができる。

もっと小さい頃はアイドルも本気で目指してたけど、
見た目や歌だけじゃない。演技力で私はトップを目指すぞ!
と、そう思ったのだ。

中学に進み、演劇部に入った私を待っていたのは、
小学生の時には決して体験できなかった、新しい出会いだった。
部活では毎日が充実したものになっている。
だがそれよりも、そして役者を目指す夢以上に、
私は大切なものを得たのかもしれない。

顧問の千曳先生は、黒ずくめの服装にぼさぼさした白髪頭と、
「図書室の主」のあだ名らしく、見た感じ近寄りがたいし、
初めは不気味で話しかけづらかったけど、
実際話すると、別に怖くもなんともなく、案外気さくなところがある。
話によると、昔この学校で少しは名の知れた熱血教師だったらしい。
確かに言われてみれば、その面影は少し残っている。
演技の素晴らしさは、さすがに目を見張る物があり、
この前、古畑任三郎の物真似をしたら、ものすごくそっくりで、
部員一同、大盛り上がりだった。

おまけに、合気道を心得てるために、殺陣もできるのだから恐れ入ってしまう。
あと、実は料理の腕前も天下一品で、部活の合宿時には、
先生の作った豪勢な料理には、誰もが目を丸くした。
あの時の先生の普段からは想像できないしたり顔は、
一生忘れることないだろう。

由美は私よりも背が低いし、胸もぺったんこで
初めて会った時は、思わず「勝った」と呟いてしまった。
でも、舞台の演技は私なんかとは比べものにならず、
特にシリアスな場面での狂気を見せた熱演は、
アカデミー賞も狙えると本気で思ったものだ。
性格も対照的だけど、かえってそれが原因ですぐに意気投合した私と由美は、
いつしか、登下校の行き帰りも一緒になって現在に至っている。

泉美は「うわ、キツそうあな。この子」と感じて、初めは敬遠したけど、
付き合ってみれば、人一倍頑張り屋だから、
演技も普段の言動もついつい過激になってしまうだけで、
本当はとても優しい女の子ということが、わかってきた。
今はクラスの対策係として、3年3組を災厄から守ろうと
部活と掛け持ちで、毎日一生懸命に努力している。



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