過去ログ - 恒一「『ある年』の3年3組の追憶」
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28:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/06(月) 21:23:40.13 ID:4DOG5YTr0

「なんだよ・・・姉貴が、事故だなんて・・・!」

俺はホラー小説は読まないが、漫画でよくこんなシチュエーションを目にする。
探偵漫画の主人公より、先に真犯人の手がかりを知ったせいで、
口封じのために殺される被害者の話とか・・・

「やめやめ!死んだって決まったわけじゃないだろ!」

そう自分に言い聞かせながらも、どんどん気持ちも足取りも重くなっていく。

「ったく、姉貴もどうしてこんなことに首突っ込むんだよ!バカ野郎・・・」

悔しさがこみ上げてくる。
例え鬱陶しくても、俺にとってたった一人の大切な姉貴なのだ。

なんとか事故やトラブルにも巻き込まれることなく、
俺は病院へ到着した。でも、油断はできない。

玄関をくぐり、受付や待合室は騒然となっていた。
患者さんたちも、ただ事じゃないと不安な面持ちでいるため、
職員が彼らに大丈夫だと言い聞かせている光景が、色んな所で見られた。

「兄貴!」

ロビーには、三人姉弟の真ん中。高校生になるすぐ上の兄貴がいた。

「兄貴、姉貴はどうしたんだよ!」

「なんかエレヴェーターが落ちたらしいっていうが、とにかく落ち着け猛!」

そう言ってなだめてはいるが、兄貴も激しい動揺の色を隠せなかった。
間もなく、両親も仕事などを中断して駆けつけ、
家族全員が、手術室の前で待機することとなった。

「沙苗は・・・、あの子は大丈夫ですよね!」

鬼気迫るお袋の問いかけに、医師も

「後は本人次第です」

と答える他無かった。

間もなく、手術中のランプが消え、自動ドアから主治医が現れた。
お袋が恐る恐る、顔を上げると彼は首を横に振り、

「お気の毒ですが・・・」

その言葉が終わらないうちに、
お袋は廊下全体に響くような叫び声を上げながら泣き崩れて、
親父がそれを必死に抱き留めた。
兄貴も愕然としている。
俺もまた、へなへなとその場にしゃがみ込んでしまった。

水野沙苗。享年20。
俺の姉貴が『六月の死者』、そして“二人目”の犠牲者となってしまった。



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