過去ログ - 恒一「『ある年』の3年3組の追憶」
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32:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/06(月) 21:26:27.10 ID:4DOG5YTr0

昔のことをふと思い出していると、ナオはさらに続けてこう言った。

「アタシ前聞いたんだけど、『いないもの』が一人は嫌だって言って、
おまじないが効かなくなったことがあるらしいじゃん。
今の『いないもの』がいつ耐えきれなくなるかわかんないし、
一ヶ月、たった一人で頑張ったんだから、
そろそろ新しい人に交代させた方が良くない?
新しい『いないもの』同士が仲良しなら、あんまりリスクもないと思うんだけど」

へぇー。ナオも結構いいこと言うじゃない。
それに、わたしはナオの意見が通って、
仮に私たちが『いないもの』になっても別にかまわなかった。
亜紀と二人だけの学園生活は、今に始まったことではなかったから。

これに対して、赤沢の言い分はこうだった。

「たしかにその案も悪くないわ。でもこれは、榊原くんのためでもあるの。
このクラスの決めごとを知らないのは、榊原くんただ一人。
なぜなら、榊原くんが転校した時には、もう『いないもの』を実践していたら、
クラスの事情を説明すると、『いないもの』の存在を認めてしまうことになる。
本来なら、対策係の私がお見舞いに行った時に説明するのが最良だと思ったけど、
この場合は、まだクラスの一員ではない部外者に話してしまうことにもなるから、
話せることができなかった。
これは私の不手際でもあるから、批判を受けても仕方のないことね。
そこで、榊原くんに事情を理解してもらう最後の切り札がこれなの。
これは・・・が自主的に教えてくれるかどうかもわからないから、
半ば賭けに近いものだけど、こうする他に恒一くんが決めごとを知る手立てはないわ。
・・・と、榊原くんを信じてあげましょう」

口に出して『いないもの』の具体的な説明ができないため、
会話がところどころ欠けてしまっているが、何となく事情はわかった。

「それじゃ、榊原くんを二人目の『いないもの』にすることに賛成か反対か、
もう一度票を入れて下さい」

いつの間にか、『いないもの』を二人とするのは既に決定事項となってしまったらしい。
わたしも票を入れたが、賛成に入れたか、反対に入れたかは亜紀以外には秘密だ。

結果は『賛成・17票 反対・9票』

委員長選に比べて票は割れたが、二倍近い差を付けたことで、
赤沢の意見が、そのままクラスの新しい決めごととなった。

「では、『明日』から榊原くんを『いないもの』とします。
クラスを災厄から守るために、みなさんも守って下さいね」

やはり赤沢も心苦しいのか、少し声のトーンが抑え気味だった。



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