過去ログ - 恒一「『ある年』の3年3組の追憶」
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37:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/06(月) 21:33:22.07 ID:4DOG5YTr0
「じゃあ、見崎鳴って子はいるの?」
久々に聞いたその名前は、懐かしさすら感じられた。
僕と反対側の席に座っている、ボロボロの机と椅子を使わされて、
ずっと孤立せざるを得なくなった『いないもの』・・・
「“ミサキ・メイ”は・・・」
僕が真相を話そうとしたその瞬間、
ずぅぅぅんと重い響きを伴って、胸に矢が深々と刺さったような痛みが僕を襲った。
「うっ・・・・!ぐっ・・・!ぐはぁっ・・・!」
視界がぐるりと回転し、横倒しになる。
いつかこんな時が来ると思っていた。
心臓が悲鳴を上げて、僕の一生が終わるその時を。
恐怖はなかった。
だが、死ぬ瞬間がこんなに苦しく痛みを伴うものだったとは、思いもよらなかった。
「高林君!高林君!」
望月君の叫び声も、もう遙か遠いものに感じられる。
死ぬ覚悟はできていても、なんでこんな時に限って突然やって来るのか。
早すぎるんじゃないか?
せめてあと一分、榊原君に少しでも教えてあげなければ・・・
突き刺すような痛みは、やがて胸を締め上げるような苦しさに変わっていった。
言いたいことは山ほどあるけど、声が出ない。
それじゃ、意味が無いじゃないか。
悔しい、こんなところで何もできない自分が悔しい。
何かが毀れる音がする。視界も聴覚も、消えていた。
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