過去ログ - 恒一「『ある年』の3年3組の追憶」
1- 20
39:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/06(月) 21:34:31.67 ID:4DOG5YTr0

この日の晩。間もなく午後7時になるが、
先日、夏至を迎えたばかりということで、まだ外は明るい。
職員室で帰る支度をする途中、外で人影が見えた。
見ると、久保寺先生がたたずんでいた。
この煙たい臭い、タバコだろうか?
確か、久保寺先生は酒もタバコも嗜まないはずだが・・・

「久保寺先生、いかがしました?」

「ああ・・・宮本先生ですが。
いや。こうでもしないと、毎日やってられなくて・・・」

やはり相当、参っているのだろう。タバコに手を出すとは重症かもしれない。

「そうだ、今晩飲みに行きませんか?私がおごりますよ」

「いえいえ。お気持ちだけでも、ありがたく受け取らせていただきます。
家族も待っていますし、では今日はこれで・・・」

近くの灰皿にタバコを押しつけると、久保寺先生はそのまま帰ってしまった。
彼は公私混同を決してしない真面目な人間だが、
誰にも相談せず、自分一人で問題を抱えてしまうきらいがある。
なにやら家庭も複雑な事情があるらしいが、直接知る人はほとんどいない。
もう少し、我々同僚にも悩みを打ち明けてくれてもいいと思うのだが。
一方、この人は・・・

「親父ー!生中ジョッキもう一杯!」

「先生、それ以上は躰にさわりますよ」

ここは飛井町にあるバーの『イノヤ』。
騒がしい居酒屋とは趣を異にする、静かで小洒落た店なのだが・・・
彼女にとっては、そのようなことなど、どうでもいいのかもしれない。

「ひっく。だいたい今の校長はさ・・・
私たちがどんなに苦労してんのか、全然わかってないのよ!
それも『知らぬが仏』だから、余計腹立たしいの。ねぇ、良子。聞いてる!」

「もう、それは姉さんの名前だって、何度言ったらわかるんですか?
私は優子ですってば。ユ・ウ・コ!
いくら酔っているとは言え、いい加減覚えて下さい。三神先輩!」

先ほどから泥酔して色々愚痴をこぼしているのは三神先生だ。
学校では凛とした雰囲気を崩さない彼女だが、実はかなりの酒豪だったりする。
一旦飲み始めると、もう誰も止めることができなかった。
普段からは想像もできないこのような姿を、とても生徒には見せられない。

「くしゅん!」と誰かが、くしゃみをしたような気がしたが、
たぶん気のせいだろう。

しかし、三神先生の気持ちも、分からなくはない。
彼女もおととしに続いて、今年は副担任という形で3組に関わっている。
しかも、甥の榊原がその3組のクラスメイトなのだから、
その精神的な疲労は、並々ならぬものがあるだろう。

そして三神先生を介抱しているのは、音楽教師の秋山先生。
セミロングの髪と、少しボーイッシュな雰囲気で、
顧問を務める吹奏楽部の女性部員の間では、人気が高いらしい。
彼女は三神先生と同じく夜見北のOGであり、確か三神先生より2歳年下のはず。
時々その頃の癖が出て、今でもたまに「先輩」と呼んでしまうらしい。



<<前のレス[*]次のレス[#]>>
154Res/348.26 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice