過去ログ - 恒一「『ある年』の3年3組の追憶」
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45:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/06(月) 21:40:38.76 ID:4DOG5YTr0

◆No.26  Yuya Mochiduki

久保寺先生がボクたちの目の前で自殺したあの日、
校内の混乱は、並大抵のものではなかった。
教室が隣の2組や4組の生徒の中には、先生が止めるのを振り切って廊下に出て、
ボクたちの惨状を見て、衝撃を受ける人も幾人か見られた。
千曳先生や宮本先生、そして三神先生もあちこちの対応に追われて
校内を目まぐるしく動き回り、
救急車やパトカーがけたたましくサイレンを鳴らしながら何台も来るなど、
校内はどこもかしこも騒然となった。

当然、ボクたち生徒は全学年問わず全員下校させられた。
階数も違って、事情をよく知らない下級生の一部は、
学校が休みになってラッキーと思ってる子もいたらしいけど、
同じ3年生は皆、不安な表情を隠せなかった。
同時に、3組に対して好奇の目で見る人もちらほら見られ、
その視線がボクにはとても辛かった。

ボクが家に帰ると、そこには知香姉さんが待っていた。

「おかえりなさい、優矢君」

「姉さん?そっか・・・今日は『イノヤ』の定休日なんだよね」

口には出さないが、学校で何か大変なことが起きたことを、
姉さんは既に察したようである。

「何か飲み物を用意してくるから、座って待っていてね」

しばらくすると、姉さんは二つ分のマグカップをトレイに乗せて戻ってきた。
この真夏に熱い飲み物?と一瞬思ったが、冷房もガンガン効いたこの部屋の中、
キーンと冷える冷たい物より、暖かい飲み物の方が、
気分的にも落ち着くのかもしれない。
姉さんの気の利いたチョイスには、脱帽する限りだ。

カップに入ってるのはコーヒーだった。
飲んでみると、苦みと酸味の後に心地よい甘みが口の中に広がる。
なんだか、ほっとした気分になってきた。

「おいしい・・・」

「ウフフ、うちの自慢のハワイコナ・エクストラファンシーよ。
お店から少し持って来ちゃった」

「え・・・?いいの?そんなお店の大切なものを・・・」

「いいのいいの。優矢君が喜んでくれれば、あたしだって嬉しいわ。
優矢君のクラスの泉美ちゃんも、このコーヒーがお気に入りみたい」

姉さんの笑みが眩しくて、なんだか照れくさくなってしまった。



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