過去ログ - 恒一「『ある年』の3年3組の追憶」
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57:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/06(月) 21:48:58.84 ID:4DOG5YTr0
つい昨日の、雨の中の別れを思い出す。
「元気でね」
私の言葉に、彩は一瞬泣きそうになりながらも、
「うん・・・電話、するから・・・またね」
と答えた。
榊原や勅使河原には「さよなら」と言ったが、あたしには
「またね」
と答えてくれた。そして私も
「またね」
と言って、再会を約束して別れたのだった。
そう、あたし達はお互いにかけがえのない親友だ。
夜見山を出さえすれば、少なくとも彩は死の危険に晒されずに済むはず。
あたしがこの一年を無事に乗り切れば、
また一緒に笑い会える日がくると信じていた。
その約束が、たった一日で破られることも、
あのY字路が、彩との今生の別れになることも露知らずに・・・
そして半日前まで、いつもと同じように仲良く語り合った親友が、
こうして今、冷たい骸(むくろ)となってあたしの前で横たわっていることを、
あたしはまだ認めることができなかった。
その日、彩の家族は誰も来なかった。
なざなら彩の両親も、彩もろとも死んでしまったのだから。
彩の祖父母は遠くに住んでいるため、こちらに来るのはまだ時間がかかりそうだ。
数時間後、泉美が病院を訪れた。
顔に白い布がかけられた彩のなきがらを目の当たりにして、
泉美は「くっ」と口元を強く噛みしめる。
「彩も・・・、私は守れなかった・・・!」
泉美は強い子だ。対策係という辛い立場に立たされても、
決して人前で涙を見せない。本当はあたしと同じくらい、
泣きたくなるような悲しみが、のしかかっているというのに。
そして、あたしは兄貴と彩の未来を奪った災厄が、憎くて憎くてたまらなかった。
あと約一週間に迫った合宿で、絶対にこの馬鹿げた災厄を止めてみせる。
二重の死。これを悲しみだけで終わらせやしない。
「兄貴・・・、彩・・・、あたしが絶対に仇を取ってやる!」
そう心に誓った。
例え、それが修羅の道であろうとも。
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