過去ログ - 恒一「『ある年』の3年3組の追憶」
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7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/06(月) 21:06:37.70 ID:4DOG5YTr0
◆No.1 Izumi Akazawa
5月6日。大型連休、いわゆるゴールデンウィークが明けた初日。
まだ休みボケが残る中で、皆が会社や学校に重い足取りで向かうのに対し、
私はまだ自室のベッドの中にいた。
『39.2℃』
情けないことに、風邪で寝込んでしまった。
ここのところ、気候の変化が激しかったから体調を崩したのかもしれないし、
先月、病院で風邪をうつされたのかもしれない。
今更、原因を突き止めようとしても仕方の無いことだけど、
私は後悔に苛まれ続けている。
病院で、榊原恒一くんと直接会ったあの日、
初対面のはずなのに、私は懐かしさを感じずにはいられなかった。
恒一くんとは、以前どこかで会った気がする。
握手をした時の、手と手の温もりも覚えている。
それがなんだったかは、未だに思い出せない。
そんな思い出に浸っていたせいで、
私は恒一くんに3年3組の決め事、現象、そして“いないもの”の話を
切り出す機会すら、頭の中から吹き飛んでしまっていた。
ゆかりは慰めてくれたけど、対策係に専念している私がこの有様では、
無能の誹りを受けても仕方がない。
体に異変を感じたのは、おとといの国民の休日だった。
3連休の中で唯一祝日ではない微妙なこの日の朝に、私は喉に違和感を感じた。
熱を測ってみると、『37.6℃』の微熱。
連休中で我が家のかかりつけの医者も休んでおり、
家にあった常備薬で何とか凌ごうとしたけど、焼け石に水だった。
食欲も無く、時々目眩もする。
それでもすぐ治ると思った私の読みが甘かったのか、
病状はどんどん悪くなる一方だった。
ふらふらする躰に活を入れ、一度は制服に着替えて出かけようとした私だったが、
母はそれを許さなかった。
「あなたは、こんなに熱があるのよ。周りの人にうつしたらどうするの!
お医者さんに連れてあげるから、今日はゆっくり休みなさい」
クラスの実情を母は知らない、いや知らせてはいけないため、
私は反論の余地も出せず、ベッドに逆戻りする羽目となった。
「なにやってるのよ、私・・・あなた、それでも対策係の自覚あるの!」
そう自分に言い聞かせるうちに、目から熱いものがこみ上げてくる。
「私は、やっぱり何もできない弱い子なんだ・・・あの時みたいに・・・」
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