過去ログ - インデックス「フィアンマに、安価で恩返しするんだよ」
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137: ◆2/3UkhVg4u1D[saga]
2012/08/23(木) 03:03:35.46 ID:43dtioNa0

少しばかり悩んで結論を出したフィアンマがケーキ屋に入って購入したのは、たっぷりの上質な生クリームを中央に巻いた、紅茶生地のロールケーキ。
ミルクティーシフォンロールだか何だか、とにかくドルチェらしい柔らかな口当たり、食感が売りらしい。
店員はどう見ても八十歳近いご婦人であったものの、『中身』は少女だったらしく残念なウインクをされた。
何とも言えない気分になりつつもにこやかに対応したフィアンマに対しての報酬は、ちょっとしたケーキのおまけ。
飴細工で出来た四葉のクローバー。薄い透けた緑色の、素敵な、涼しげな菓子細工。
『幸運』を象徴するソレは、フィアンマにとって苦々しい思い出しかない。

他者にも自分の幸運を分け与えてどうにか疎外されないようにと行った努力。
バラバラにちぎられた、無残な姿のクローバー。

孤独の、象徴。

しかし、持って帰ればインデックスは綺麗だと言って笑んでから食べるだろう。
そう思えばどうにか、我慢して捨てずに帰宅することが出来た。

インデックス「お帰り! その箱は何かな?」

フィアンマ「ケーキだ」

インデックス「ケーキ!?」

トラブルは起きていても、まだ災害は起きていない。
どれ程魔術に精通していても、インデックスは見目以上に精神性の幼い優しい少女でしかない。
世界中が危機に晒されていても、自分のすぐ傍に居る人間が無事で、美味しい甘いものを提示されれば何もかも忘れて笑顔になってしまう。
フィアンマにとってはむしろ、その無邪気さが好ましかった。
機嫌よく彼女は彼から箱を受け取り、テーブルの上に乗せる。
ぱかり、と箱を開ければ、紅茶の茶葉の色をした大きめのロールケーキの上に生クリームがあしらわれ、その上にちょこんと四葉のクローバーの飴細工が乗っかっている。
そわそわとしながらフォークやナイフ、皿等を用意しつつ、インデックスはフィアンマを見上げた。

インデックス「ミハイルも食べるよね! 私が切り分けるんだよ」

フィアンマ「俺様は少しで良い」

インデックス「うーん…この辺りで良いかな?」

フィアンマ「いや、もう少しばかりこちら側で良い」

切込を入れる場所に悩むインデックスに、自分の分は本当に少しで良いのだと告げ、彼は台所に引っ込んだ。
ミルクティー味のケーキを食べるのであれば、共に頂くお茶はさっぱりしたものが良い。
とはいえ多少甘くなければ少女の子供舌には酷だろうか、と思いつつ、フィアンマはお茶を淹れる。
正確にはお茶とも呼べない。ホットレモネード(ホットレモン)だ。
魔術的に様々な工夫を施したこの家は夏にも関わらず涼しい。
なので、温かい飲み物でも何ら問題がない。
ついでに言えば、喉に何か食べ物が詰まった時、冷たい飲み物よりも温かい飲み物の方が流し込み易い。
色々と(彼にしては珍しい他者への)気遣いによってその選択と相成ったのだが、ケーキを食べてから飲んだら確実に酸っぱいという事が多少失念されている感は否めない。
フィアンマはしばらく考えた後、インデックスの分には砂糖と蜂蜜を程よく溶かした。
対して、自分の分にはほとんど砂糖を入れない。蜂蜜などもっての他。
多分これで大丈夫だろう、と適当に決め、ホットレモネードをテーブルに置き。
向かい合わせに置かれたカップが不服だったのか、インデックスはそっとカップを隣り同士に置く。
ついでに皿とフォーク、スプーンもそれぞれカップの隣に置けば配膳(セッティング)は完璧だ。
何故カップを隣り同士に置いて座席位置をほぼ強制的に変更したのか、指摘を受ける前に慌ただしく少女は席に着く。
前述の通り指摘しようかと思ったものの、別に少女の隣に座る事にそこまで強く嫌悪感を抱く事もないフィアンマは無言のままに席へ着く。

インデックス「美味しそうかも」

フィアンマ「一応売れ筋の物らしいが」

インデックス「お祈りの時間すら惜しいんだよ! いただきまーす!」

フィアンマ「…それで良いのか、修道女見習い」

日本式の短い食前挨拶を言い、勢いよく食べ始めるインデックスの様子にそう無気力にツッコミを入れつつ、彼もまた、食べ始めるのだった。


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