過去ログ - インデックス「フィアンマに、安価で恩返しするんだよ」
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141: ◆2/3UkhVg4u1D[saga]
2012/08/23(木) 03:05:20.20 ID:43dtioNa0

十年ほど、前。昔。
俺様は個人的な所用の為、日本に居た。
その用事を済ませ、気分転換がてら散歩をしていた時のこと。
公園で、一人の幼い少年が、他の子供から虐げられていた。

「やくびょうがみ」

「きもちわるいんだよ」

「あ、さわっちまった…やべえ」

「……、…」

虐げられている子供は口答え一つせずに目を伏せていた。
虚ろな表情だった。
虐げていた側の子供達はやがて罵声を放つ事に飽きたのか、その場から立ち去っていった。
最後のおまけだ、とばかりに、その黒髪の虚ろな少年を突き飛ばして。
どうしてだろうか、他人に同情するなんて性格はしていなかったはずなのに。
尻餅をつき、のろのろと立ち上がる少年に、手を差し伸べた。
きっと、幼い頃の自分と重ねたのだ。
母親が居らず、あまりにも幸運過ぎて気味の悪かったせいで虐げられた自分に似ていたから。
ただ、少年は自分とは正反対に不運で仕方のないようだった。

「………」

「…怪我は…膝に、しているな」

「…さわらないほうがいいよ」

「…理由は?」

「おれ、やくびょうがみだから。おにいさん、ふこうになっちゃうよ」

「……ならないさ。なれないんだ」

うまく表情が作れている自信は無かったけれど、微笑んでみせた。
少年はじっと俺様の表情を見つめた後、手を取って立ち上がった。
そして俺様から促されるままにベンチへと腰掛ける。
不運にも転んだ瞬間に手をつけなかった彼の膝は擦りむかれていて、痛々しい傷を見せていた。
『箱庭』を造り治そうとしたが、どうにもうまくいかなかった。
試しに効果の薄い魔術を施し、何が原因なのか探ろうとした。

幼い少年の、右手だった。

「…おにいさん?」

「…ん、あぁ、何でもない。大丈夫だ。もう少し待ってくれ」

幻想殺し、という単語が頭に浮かんだ。
次代の幻想殺しが彼に備わっているのだろう。
可哀想に、と思った。自分の知っている限りでは、神の奇跡すら、この右手は打ち消してしまう。
今はまだ子供であるために効力は今ひとつ、弱いようだが。
工夫して組み上げた術式を少年の膝に適用させると、存外すぐに治っていった。
彼が成人するまでの間に、この術式も通用しなくなるのだろうが。


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