過去ログ - インデックス「フィアンマに、安価で恩返しするんだよ」
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145: ◆2/3UkhVg4u1D[saga]
2012/08/23(木) 03:06:36.33 ID:43dtioNa0

ひとしきり泣いて落ち着いたらしい少年は、深呼吸をして呼吸ペースを整えた。

「ん、…もう、だいじょうぶ。ごめんなさい」

「子供は泣いても良いんだ。謝罪する必要は無い」

「んと…えっと…そうだ、おにいさん。ほかにもまほうみせて!」

「そうだな…」

自分が扱えるのはどうにも物騒なものばかり。
少し悩んだ結果、優しい嘘を吐く事にした。
虐げられても純真な少年は、俺様の言う事に素直に従った。

「目を閉じて、美味しい菓子を思い浮かべるんだ。甘いキャラメルを」

「みるくきゃらめる?」

「苺飴でも良い。何ならチョコレートでも良いぞ。沢山、好きなだけ思い浮かべろ」

「うーん…」

「そして、それのほとんどはココに現れると思い込め。お前が信じなければ、俺様は魔法を使えない」

「いっぱいのおかし…きゃらめる、ちょこ、びすけっと…あ、あとくっきーも」

虚空から取り出した鞄は、俺様の私物。
日本に来て買い込んだ数え切れない位の菓子は口寂しさを癒す為のものだったが、あげても構わないだろう。
なるべく音を立てないように、大量の菓子を取り出しては、ベンチの上に置いていく。
そして鞄を再び虚空へと片付けてしまえば、何ら痕跡は残されない。
ベンチの上には、沢山のチョコレートとビスケット、クッキー、キャラメル、個装された飴玉の山。
出来る事であればお菓子の家の一つでも用意出来れば良かったが、生憎俺様は本物の魔法使いではない。
所詮は魔術師に過ぎない俺様が出来るのは、この程度だった。
もう目を開けても良いぞ、と言えば、少年は目を開き。
そして菓子で出来た小さな山を見ると、再び目を輝かせた。

「わぁ…!!」

「食べて良いぞ」

「え、でも、」

「目についたものから好きに食せば良い」

「…い、いただきまーす」

目に付いたもの。
個装のチョコレートを食べた少年は、幸せそうに笑う。

「おいしい! おにいさん、これほんとにいいの?」

「あぁ、全部食べて良いぞ」

祈りは届く。それで人は救われる。
自分としては、まったくもってそんな事は無かったが、どうやらそんな下らない幻想も、今に限っては、実現出来た。


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