過去ログ - インデックス「フィアンマに、安価で恩返しするんだよ」
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235: ◆2/3UkhVg4u1D[saga]
2012/08/30(木) 22:33:17.93 ID:fMZI0U0w0

十月某日。
決断をした日より数日後の事。深夜。
フィアンマは、玄関前で考え事をしていた。
インデックスが目覚める前に出ていくべきか、それとも別れを告げてから出ていくか。
これ以降、彼女と会う事はきっと無いだろう。むしろ、無い方がありがたい。

フィアンマ(…これから捨てるモノに何を、)

自分はこんなに甘く優しい人間だっただろうか、と彼は自嘲する。
彼女の笑顔を守る為に、そしてあの少年の為に、世界を救うのだ。そう思わなければやってられそうにない。
武器の調子でも確かめるように、右手、拳を握り、開いて。
目を伏せ、やはり別れは告げずに行こうと決め、フィアンマは玄関の取っ手に手をかける。
ガタガタ、と音がした。物が落下した訳ではない。人の足音。
振り返ると、インデックスが眠そうに目元を指で擦り、首を傾げていた。

インデックス「…仕事行く…の…?」

フィアンマ「……、…」

不安げな表情で、眠いのか、覚束無い足取りでフィアンマに近寄った彼女は、彼を見上げながら問いかける。

インデックス「……、…早く…帰ってきて、ね…」

フィアンマ「………」

振り返るべきではなかった。
そう思い、沈黙しているフィアンマの態度から何を読み取ったのか、インデックスは眉を下げて指摘する。

インデックス「…そ、っか。…『遠く』、に…行くんだね…?」

フィアンマ「……」

何か言わなければ。
何か言って、誤魔化さなければ。
でも、これが最後の会話になる。
最後の最後、彼女に嘘を吐くのか。
しかし捨てると決めた。切り捨てると決めたのだから、容赦はいらない。
それなのに、言葉に詰まった。

沈黙を貫いているフィアンマに、インデックスはまるで子供をあやす母親のような優しい笑みを見せる。

インデックス「…それが、ミハイルの決めた事だもん、好きにしたら、いいんだよ。…でも、私はずっと、ミハイルの味方だよ」

フィアンマ「…」

インデックス「…きっと、戻ってくるよね? この間のお仕事みたいに、時間はかかっても…帰って、くるよね…?」

彼を困らせてはいけない、とインデックスは我慢する。
本当は行って欲しくない此処に居てと泣き喚きたいけれど、我慢した。
疑問形の言葉に、返答は来ない。
ぞわぞわと胸騒ぎがする。引き止めなければいけない気がする。
それでも我慢する。彼が決めた事なのだから、きっと自分が思っているよりも、正しい事なんだ。

インデックス「…ミハイル。…ど、うして…何も言ってくれない、の?」

フィアンマ「……帰ってきたら、出迎えてくれるか」

インデックス「うん、当たり前かも。長くかかるの?」

フィアンマ「…あぁ、とても長くかかる。ずっと帰って来られない」

インデックス「でも、待ってる。…帰ってくるまでに、もっとお料理も勉強しておくからね! 後、他にもお皿洗ったり、家事、出来るように、頑張って…練習、する。それと、それと

…」

指折り数えて、沢山候補をあげて。
会話をする事で自分を引き止めてくれている事くらい、フィアンマには理解出来た。
重要な局面での聡さは自分だけでなく、これまで多くの人々の支えになってきたのだろう。

もう候補が浮かばない、と無力感に俯き、インデックスは自分の衣服を握り締める。
ぼろぼろと大粒の涙を零し、小さく震えながらも激情を堪える小柄な少女の姿は、ただそれだけで画になるようだった。


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