過去ログ - 燈馬「おはようございます」可奈「はい、お弁当」
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3:燈可奈弁 ◆WxhrC2Qhtw[saga]
2012/08/09(木) 15:00:02.47 ID:gcH1Y9zQ0
>>2

丁重に頭を下げられて、当時分かりやすく暇だった事もあってこの工場に来てみると、
要は工場と元請けのトラブルだった。
工場側には非が無い事を証明する事は、想にとって容易な事だった。
その後、いくつかの段階を経て、この小さな町工場の正社員になった。

と、想が可奈に告げた時、可奈は見事に絶句した。
だが、想の昔馴染みであればそんな反応では済まない。
少なくとも約一名、この工場を幾つ買い取られるかの規模の札束ケースを持参して、
その場で実行に移そうとして側近中の側近に車に引きずり戻された知り合いがいる。
可奈もその片鱗ぐらいは理解して、それでも、「あんたらしい」と歓迎してくれた笑顔が思い出される。

「燈馬さん?」
「はい」

事あらばとてつもない切れ者なのに、子どもみたいな笑顔を見せる。
根が素直なこの工員も想のそういう所が憎めないと、今はそう受け取っていた。
只、今の想の、自分の世界な笑顔は、なんとなーく思い当たりそうな気がするが、
下手を打てばその「切れ者」の部分がなんとなーく自分に向かいそうなので自重しておく。

 ×     ×

「燈馬さーん」

定時退社後、隅田川の川沿いに歩き出した想はその声に振り返る。
一人の少女が、橋の上から想に向けて手を振っている。
近くの公立中学の制服姿で、周囲には同じ部活動らしき友人がいる。
想は、柔らかい笑みを浮かべ、小さく手を振り返す。

彼女が美里、水原美里。この人間好きで快活な所は母親譲りかと想は思う。
一見人畜無害そうなのが想。そしてルックスも案外悪くない。こうして中年に差し掛かっても、
この穏やかな雰囲気は、橋の上の見知らぬ少女にも案外悪い印象では無かったらしい。

そのまま、川沿いに次の橋へと歩みを進める。
一日を終える者、始める者、通行人もこの川縁のホームレスも様々だ。
そのまま、想は至って質素、かつ年季の入ったアパートの一室に帰宅する。
着替えて机に向かい、計算に没頭する。


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