115: ◆WNrWKtkPz.[saga]
2012/08/17(金) 11:47:21.74 ID:yeyu0jZa0
「……おい、渚さんから離れろ!」
「どうした? せっかくチャンスを与えられたというのに……?」
俺は震える身体を制して1歩だけ前に出た。
別に渚さんなんてまだ出会って間もない他人なのだから、逃げればよかったのに。
なぜか、それを許すことが出来なかった。
「忍くん! なんで!?」
「……俺みたいな嘘つきのクズ人間を、渚さんは救ってくれたんです。だから、俺は貴女のためなら――死んでもいい!」
いまある命は彼女に救われたものなのだ。
ならば、せめて渚さんだけでも生き残って欲しい。
「高山さん、渚さんから離れてください――」
手には禍々しく光るJOKERのPDA
「離れないなら……このPDAを俺が破壊します」
「……ッ!」
そういった瞬間に高山は渚から素早く離れて、こちらをじっと見つめた。
「俺の解除条件は、JOKERのPDAの破壊だ。別に俺が破壊しなくても良いという可能性があるとおもうのだが?」
「確かにその通りだ。しかし、逆に言えば高山さんがこのPDAを破壊しなければ、条件未達成と判定される可能性もある」
俺は必死に口を動かし続けた。
「あなたは俺が脅すのと同時に渚さんから離れた。つまり、俺が言ったもしかしたら……という可能性を認識しているということになる」
「…………」
高山は何も言うことなく、真顔でこちらを見ている。
「見たところ高山さんは、できるだけ早く首輪の解除条件を達成しておきたいようですね? でもそれって、生きる事への執着心が大きいと考えることが出来るんですよね」
高山は、俺以上に“生きたい”と思っているのかもしれない。
「だから、こんなところでヘマをしたくない。そういった気持ちが、いまの行動に表れているんです」
半分推定、半分妄想というこの論弁が、高山に通用するのだろうか……?
「確かに、お前の言うとおりだ。だから、その握る手を緩めてくれ」
「……ここから今すぐ去ってください。そうしなければ、このPDAは壊れます――」
薄っぺらいPDAは今まで以上に大きな軋みを上げていた。
「細川、お前のことを少しだけ侮っていたようだ――」
小さくそう声を漏らしながら、近くにある廊下へ走って行った……
【DEAD回避!】
986Res/411.09 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。