過去ログ - 紬「わがままマジック」
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8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]
2012/08/16(木) 07:58:56.47 ID:DeNa+wh1o



――私は、急いだ。

醒めなくてはいけない夢。醒めるべき夢。
唯ちゃんのことを思えば思うほど、今の状況をそうとしか認識できなくなっていった。

魔法を使ってまで叶えたかった今の状況、それに浸りたい気持ちももちろんある。
私自身のことだけを考え、神様のくれた非日常を心行くまで楽しみたい。そんな気持ちがないといえば嘘になる。

でもやっぱり、唯ちゃんのことを考えると、それは間違ってるって思う。

気持ちを、行動を、魔法なんかで好き勝手に操るなんてこと、やっぱり許されないんだ。
どうせすべて忘れてしまうとはいえ、ううん、忘れてしまうからこそ唯ちゃんの時間を独り占めすることはいけないんだ。
唯ちゃんさえも忘れてしまうこの時間は、本当の意味で私だけのものになってしまう。

唯ちゃんの気持ちも、時間も、私が奪ってる。それはよく考えたりなんてしなくても、悪いこと。いけないこと。

なのにそれでも、すぐに手放すのは惜しすぎた。夢にまで見た、願い続けたこの現状を、すぐ切り捨てることなんて出来ないくらい私は弱かった。

だから、期日を定めて急いだ。
今日一日で、出来るだけ唯ちゃんとの恋人関係を味わい尽くそうって決めた。
恋人同士でしか見れない唯ちゃんの表情を、少しでも多く見ようって決めた。

授業中。休み時間。お昼ご飯の時間。
いつも以上に輝く、いつもの時間。いつも通りじゃない時間。

笑顔、照れ顔、安堵の顔。
呼び名は一緒でもみんなといる時とは少し違う、二人きりの時だけに見せるそんな顔。

それらは、とてもとても愛おしくて。


そうして味を占めた私は、最後にあるものを望んでしまった。


唯ちゃんを困らせてみたい。


マンガとかでは割とある、好きだからこそ困らせたい、みたいな感情。

いつの間にかそんな感情が芽生えてきていた事に、せめて少しくらいは驚くべきだった。
唯ちゃんを好きなはずなのに、困らせたいという矛盾に、疑問を持つべきだった。
こういうことは大体ろくでもないトラブルの元になるって、思い出すべきだった。

でも、そのときの私は何ら躊躇わなかった。
これで最後だから、とか、どうせ夢だから、とか、逃げ道はいくらでもあった。きっとそれに胡坐をかいていたんだ。
もしかしたら、ちゃんと自分を自制して今日一日で夢から醒める、そんな決意をした『自分へのご褒美』とか、そんな考えだったのかもしれない。
私は偉い子、いい子だから、全てを手に入れる権利がある。そんな思い上がりと言い訳だったのかもしれない。

高望みしちゃいけないって、わかってたはずなのに。




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