145:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2012/09/04(火) 20:51:48.72 ID:QA3r/TNDO
 ─────数時間後   見滝原中学  
  
  
 男子生徒A「いや、まじ読んでみろって、王ドロボウJing。」 
  
  
 男子生徒B「あの時代のボンボンってどんな客層狙ってたんだろうな。」 
  
  
 お弁当を家に忘れてきたことに気付いたのはお昼休みのチャイムと共にカバンを開いた時だった。  
 そういえば、あの時カッとなったままに家を出てきてしまったが、カバンの中に弁当箱を入れた覚えがない。  
  
  
 マミは唇を噛み締めて俯いた。  
 情けなくなくて仕方がない。 
  
  
 朝はあんなに楽しかったのに、勝手に見透かされたような気分になって逆上してしまった。  
 さぞや彼も、呆れ果てて、愛想を尽かしたことだろう。  
  
  
 いつだってそうなのだ。  
 求められたらかえせないくせに、自分はどこか期待している。  
  
  
 今だって、この喧騒の中、自分が俯いている様を見て、気になっているクラスメイトがいるのだ。  
  
  
 例えば、「お弁当忘れちゃった。」 
  
  
 とかなんとか、今まで誰かがしていた事ができれば彼女達だって助けてくれるかもしれない。  
  
  
 今なら間に合うだろうか────今さらだ。 
  
  
 今なら冗談っぽく笑って────今さらだ。 
  
  
 今さら、マミにはどうもできなかった。 
  
  
 そんな勇気は、もう彼女の中にはひとかけらもない。そして、マミはガタンと音をたてて立ち上がり、逃げるように教室から出ていった。  
  
  
 廊下を抜けて、階段を駈け降りて、時々人にぶつかりそうになりながらも、すりぬけていく。  
  
  
 自分は透明人間みたいだと、マミは思った。 
 誰にも気付かれず、悟られず、このまま消え去ってもなんの問題もない。  
  
  
 (嫌だ。) 
  
  
 誰も声をかけてくれない。  
  
  
 (嫌だ。嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。) 
  
  
 ひとりぼっちは────嫌だ。  
  
  
 「マミ!」 
  
  
 突然、後ろから呼び止められた。 
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