671:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2012/11/02(金) 13:46:35.43 ID:fX/PHNcDO
長い入院生活の中ではあまり他人から感情をぶつけられる事はない。
皆が気をつかうからだ。
誰かに頼られる事もなければ、弱音を吐かれる事もない。
少しだけうそ臭い人間関係。
でも今は、ずっと自分の側にいてくれた少女が涙を流している。
理由は正直よく分からない。
しかしこの瞬間、彼女は正直な素直な心を見せてくれているのだ。
恭介「いいよ。さやか、もう、いいんだよ」
それでもやっぱり、笑ってほしい。
恭介はごめんと繰り返す彼女の肩に額を当てた。
抱き締める事ができない自分にできる精一杯であった。
さやかは、そんな恭介を強く抱き締める。
涙を流しながら、強く。強く。
やっと探し人に会えた迷子の子供が握った手を離さないみたいに。
恭介「ありがとう、さやか。助かったよ。そして、ありがとう。今まで僕の隣にいてくれて本当にありがとう」
さやか「恭介……恭介ぇ。うぅッ……うわあああん」
恭介「それを伝えたかったんだ。ずっとずっと伝えなきゃいけなかったのに、忘れていたんだ。今日、やっと言えたよ」
さやかは泣いた。
恭介も笑いながら、少しだけ泣いた。
クロは離れた所で、少しだけ照れくさそうに明後日の方向に顔を向けていた。
そして、弾けるように結界が解けた。
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