過去ログ - 【咲-saki-】京太郎「俺がギャルゲー主じｒｙ」？？「見　つ　け　た」透華「！？」 -SS速報VIP

過去ログ - 【咲-saki-】京太郎「俺がギャルゲー主じｒｙ」？？「見　つ　け　た」透華「！？」

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586: ◆LA9PoGiCNE[saga]
2012/08/29(水) 02:54:31.10 ID:1jAKWwN0o
　南場４局。親番もあっさりと流された後の、前半戦最後の局。

京太郎(どれを切ったらいいんだ……？　分かんねえ、何一つ分っかんねえ……！)

　追い詰められている。
　濃霧の中の強行軍。周囲には地雷に底なしの沼、毒蛇毒虫のたむろする落とし穴……！

京太郎(――――――――ダメだ……勝てない……)

　京太郎は気付いていない。
　自身が浮ついていることに。
　嵌っている、自ら掘った落とし穴。
　自分は勝てるに違いない――――そんな、根拠のない自信を持ってしまっていたこと、それが元凶。

漫「――――ツモ！　立直・門前３０符２飜で５００・１０００ですね」

　南４局、漫の安い和了りで終了。

郁乃「は～い、それじゃあここで一度休憩な～。続きは～……んー、三十分後でええかな～。今日は奢ってがえるから、好きなもん頼んでええよ～♪」

恭子「……別にええですよ。自分の分ぐらい払いますんで」

由子「そうなのよー」

漫「そ、そうですね。監督、お気遣いなくー」

郁乃「え～？　遠慮せんでええのに～」

和「須賀君……！」

京太郎「――――――――」

　姫松の面々がそうした会話をしているのを尻目に、対局中、ずっと心配そうに勝負を見守っていた和が駆け寄り、手で顔を覆って椅子にもたれかかっている京太郎へ呼び掛ける。
　返事は無い。
　無言こそが、今の彼にできる最大級の返事。

和「え、えっと、とりあえず前半戦は終わりましたし、こっちで休憩――――！？」

　動こうとしない京太郎を促すため、肩に触れて目を見張る。
　汗、それも来ている服を湿らせるほどの。
　対局中、京太郎がどれほどの緊張状態にあったのか、手に取るように分かる。

和(こんなの……！)

　胸の内に湧いた思いを途中で掻き消す。
　こんな風に落ち込んでいるのは京太郎らしくない――――そんなことを考えた自分が憎らしい。

和(……勝負に勝てる喜びを知ったから、でしょうか)

京太郎「――――悪い、和……ちょっと、顔洗ってくる……」

　ふらりと立ち上がって自分を押しのけるようにして、男性用の手洗いへ向かう京太郎の背中を見送りながら唇を噛む。
　それを悪いことだなど、口が裂けても言えるはずがなかった。

？？「おっと、悪いな……通るぜ」

和「い、いえ、こちらこそすみません……」

　無力感に打ちひしがれる和の横を、カウンター席で一人酒を嗜んでいた男が通る。
　歳を感じさせる白髪ながら、全体的に若々しさとも取れる張りのある空気を纏った壮年の男性。
　京太郎に続いて手洗いへ入っていく男性をぼんやり眺めながら、和がポツイと漏らした。

和「こんな時、宮永さんや優希達ならどうやって須賀君を励ますのかな……」

　いつもの京太郎であれば、それだけで狂喜乱舞したであろう言葉は、ただただ虚しく宙に消えていった――――

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