過去ログ - 春香「ねぇプロデューサーさん?」
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2012/08/24(金) 00:40:23.02 ID:+gymnPO2o
【春香遠く】

「ふぅ……今日もご苦労様でございました俺、そして春香!」

「そうですねっ♪ お疲れ様でした!」

コンビニに寄ってからというもの、春香はずっと黙りっぱなしだったが、
何故かニコニコと微笑みながら、鼻歌交じりに窓の外を眺めていた。

そして今、車を降りて事務所へと歩いている間も、やはり春香は
お誕生日にお人形さんの贈り物を貰ったお嬢さんのように、
おスキップ手前といった、おウキウキとしたお足取りでお歩いていらっしゃる。

大事そうに携帯を手に持っていたが、誰かからメールでも来たのだろうか?

「随分とご機嫌じゃないか? 何かいいことでもあったか?」

「えぇそりゃーもう!!」

俺の少し前を歩いていた春香はクルリと振り返り、髪とスカートを揺らした。
春香のように、感情の変化が仕草や声の調子でわかるような、
純粋で素直な性格を羨ましく思う時がある。

こうして見ていると、やはり春香はみんなの中で一番アイドルをしているな。
もちろん誰が優れているとか劣っているとか、そういう意味ではない。
765プロのアイドル達はみんなそれぞれ良いところを持っていて、それぞれが魅力的だからな。
ただ俺が思うアイドルの姿に一番近いのが春香なのだ。

一昔前のアイドル像とでもいうのだろうか?

どう言えばいいのか分からないが……どこにでも、それこそ隣に住んでそうな女の子。
そんな子がテレビに出て、歌を歌って、踊りを踊っている。

そういう風に、身近に感じられることはすごく重要なのだ。
なにも俗世間からかけ離れた“華やかさ”を持つ者だけが、
アイドルとして優れているのではない。

それが高く聳え立つ山の頂、突き出た尾根に咲く一輪の花だとするならば、
春香は道端か河川敷か公園か……我々の日常風景の中で
ひと際美しく咲いた可憐な花なのだ。

少なくとも俺自身は、春香の魅力はそこにあると考えている。

「あっいけない!」

その春香の声が、一人思念に耽っていた俺の耳を劈いた。
まさか自分がホメられているとは露知らず、春香は口に手を当て驚きの表情を見せる。

「ちょ、ちょっとコンビニ行ってきます!」

「なんだ、買う物があったならさっき買えば良かったじゃないか」

「えへへ、忘れてました」

最近では今の春香のように、テレながら舌を出すことを“てへぺろ”と呼ぶらしい。
春香はその“てへぺろ”を決め込みながら、拳を握り、自分の頭を軽く叩いた。

それは決して初代林家三平師匠のモノマネを決め込んだわけではない。

「お金はあるか?」

「いえいえ、個人的な買い物なのでっ」

「そうか……先に事務所に戻っておくからな」

「はーい!」

春香は背中で返事をしながら小走りで俺の元を離れていった。

俺はいつもそうするように、春香が転んでしまわないだろうかと、
その後姿がひとしきり小さくなり、都会の群集に紛れてしまうまで
スカートとリボンが揺れる様と、不安を誘う軽い足取りを目で追った。

無事にコンビニまでたどり着けることを願いつつ視線を戻し、
一体何を買うのだろうと思いながらも、俺の足はすでに事務所へと向かっていた。

「あぁ……緊張するなぁ」


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