過去ログ - 春香「ねぇプロデューサーさん?」
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2012/08/24(金) 02:05:12.90 ID:+gymnPO2o
「何が幸せで、何が不幸なのか……私には分かりません」
本心……それは自分がそうであると信じていたに過ぎなかった。
人の心は見ることが出来ないと言うけれど、それは自分の心だって同じだと思う。
人は自分ですら騙してしまう生き物だから。
泣きたくないのに涙が出たり、笑いたくないの笑ったり。
辛くて苦しいはずなのに、なんでもないと気丈に振舞ってみたり。
そんなことを続けている内に、自分の本当の気持ちが分からなくなってしまう。
今だってそう……私は二人が結ばれて嬉しいはずなのに…………
幸せそうな二人の笑顔につられて、笑っているはずなのに…………
「プロデューサーさん……ごめんなさい」
……どうして?
どうして胸が苦しくなって、震えが止まらなくなって、涙が溢れ出てくるの?
異性の前、近しい人の前……好きな人の前で涙を流すことの恥ずかしさも感じなくて、
気が付けば自分の感情を抑えることが出来ずに、嗚咽を繰り返していた。
息は途切れ途切れで、歪んだ口元からは声にならない声が漏れる。
「……ごべんなざい……ごめんなざい」
私が涙を流す間、プロデューサーさんは何も言わなかった。
いや……何も言わないでいてくれた。
そんな優しいプロデューサーさんに比べて、
自分があまりに身勝手すぎて自己嫌悪感で一杯になる。
諦めるとか諦めきれないだとか、外野の私が勝手に喚いてるだけでしかないのに。
それで胸が苦しくなって涙が出るなんて……やっぱり私はワガママなんだ。
「ごめんな春香……俺はプロデューサー失格だ」
きっとプロデューサーさんは私が悩んでいたことにも気付かなかっただろうし、
今私の目から滝のように流れ出る涙の理由もわからないんだろう。
プロデューサーさんは唇を噛み締め、拳を握り締めて、申し訳なさそうに呟いた。
「いいんです……隠してましたから」
それに私自身、自分がこれほどまで感情を溜め込んでいたことに気付かなかった。
プロデューサーさんの前で、これほどまで感情を露にするとは思わなかった。
悔しそうな顔をしてくれたプロデューサーさんと同じように、
自分が悩んでいることも、その涙の理由も分からなかった。
「ごめんなさいプロデューサーさん……勝手ですけど、この涙は忘れてください」
私はもう、土俵に上がることが許されない存在になった。
それなのにこうして悲劇のヒロインを気取ってる自分が嫌になる。
以前からそうだった……プロデューサーさんのことが好きで好きで堪らなくなって、
そうであればあるほど、他の子たちのことが嫌いで嫌いで堪らなくなって、
でも、みんなのことを本当に嫌いになんてなれるわけがなくて…………
芸能界には、他人を蹴落としてのし上がるという側面もあるとは思う。
でも私はそういう手段を取りたくはなかったし、取らない自信があった。
それなのに、ふと気が付けば心の中に黒く濁ったヘドロのような感情が生まれていた。
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