10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県)[sage]
2012/08/23(木) 06:21:02.97 ID:XN+yu6zQo
……参ったなぁ、こりゃ。
『姉妹』って、いや、『家族』ってものは、ここまで完成した関係だったのか。
ここまで、その場に自然とあるだけで完成して、完結できる関係だったのか。
ちょっと離れただけでそんなことにさえ疑問を持ってしまった私とは比べ物にならない。この姉妹の絆は。
いくら離れても切れることの無い、永遠の絆。家族という名の。それに不満や不安を抱くことそのものが間違っているんだ。
……両親が家に居ないことが多い平沢家のこの姉妹が、何よりも家族を体現しているのはちょっとした皮肉かもしれないけど。
仮に私の一件がなくても、私はきっと唯の姿に疑問を抱いていただろうな。
大学ではちゃんと立派にやってるのに家に帰れば憂ちゃんに甘えて、どういうことだよ、って。
でもやっぱり、唯の成長の片鱗は憂ちゃんには見えるんだろう。そんないつも通りのやり取りの中にも、わずかだけ見えるんだろう。
ずっと一緒にいた姉妹だから、少し離れてしまった姉妹だから、それでも変わらない永遠の姉妹だから、見えるんだろう。
……思えばさっき、唯が憂ちゃんを手伝うことに乗り気だったように。そんな些細なところから。
そして、そんな唯の変わった点も変わりない点も、等しく憂ちゃんは受け入れ、喜ぶ。
……いや、憂ちゃんは、じゃなくて、家族なら誰でも喜ぶ。
でも、互いに互いを大好きと公言して憚らない、互いを自分に必要不可欠と見ているこの姉妹ならその説得力はとても大きい。
本来、この姉妹の仲良しっぷりを見ていればわざわざ言葉にされなくてもわかりそうなものだけど。
まーそれでも仕方ない。そんなことさえわからない情けない一面を持つのも私なんだ。
そしてそんな一面だって、家族になら見せてもなんら問題はないんだ。
変に背伸びする必要なんて、どこにもないんだ、家族の前なら。
唯「ごめーん、遅くなっちゃった!」
律「…いや、いいタイミングだよ、唯」
唯「へ?」
憂「ふふっ。……じゃあ、律さん?」
律「うん。再開だー!」
唯「え? えー? なになに、なんか除け者にされてる気がする……」
律「……家族のために美味しいものを作ってやろう! ってことだよ」
まだ少し納得がいっていない様子の唯の背を押し、中断前の位置へ。
悪いけど、後で憂ちゃんに適当に説明しておいてもらおう。全部言ってしまっても別に構わないし。
構わないけど、今はこっちのほうが重要、ということ。
私の柄じゃないチマチマしたスイーツだけど、作ろうとするくらいには成長したって見せてあげたくて。
でもやっぱり全然上手には作れないくらい苦手なままだってのも隠すつもりはなくて。
そんな、ありのままの私を家族に見てもらわなくちゃいけないから――
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