7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/08/24(金) 19:51:47.96 ID:NZSihzP+o
「あのね、律子姉ちゃん。ぼ……私たち、拉致されたみたい」
ようやく押し出すようにして言った涼の言葉を、しばし、理解出来なかった。驚きの反応も遅れてしまう。
「えぇっ?」
「律子姉ちゃんも、私も手術台みたいなところに縛り付けられてて、律子姉ちゃんは目隠しされてる」
「ウソ……」
呆然と、言葉を漏らす。それ以外、なにも思考が形にならなかった。
「少なくとも、私が頭を動かせる範囲で見える部分で言うと、そうなんだ……」
ごくり、と唾を飲み込む。ずきりと後頭部が痛んだが、その痛みがかえって希薄になっていた現実感をつなぎ止めてくれた。
「……私たち以外に、誰かいるの?」
しばし考えて、そう問いかけてみた。目隠しされているという自分にはなにも見えない以上、涼からの情報をあてにするしかない。
「いまのところ、部屋には誰もいないみたいだけど……」
「じゃ、じゃあ、涼。落ち着いて、見えるものを教えてちょうだい。なんとか逃げられないか探らないと」
「うん、わかった。ええと……」
『おっと、おしゃべりはそこまでにしてもらおう』
唐突に、ざらついた声が響く。合成音……いや、ボイスチェンジャーだ。
「天井にあるスピーカーから声が出てるよ。人が入ってきたわけじゃない」
抑えた声でそう涼が教えてくれる。その情報を得ることは不安を和らげてくれたものの、それ以上の嫌な予感をもたらした。
『黙れ』
「うぐっ」
思った通り、というべきだろうか。きつい声が飛び、次いで涼の苦鳴が聞こえた。
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