30:みの ◆hetalol7Bc[sage]
2012/08/28(火) 00:16:08.05 ID:bOaug2Ec0
気がついてみると、さっきから、
ごとごとごとごと、男の乗っている小さな列車が走りつづけていたのだった。
ほんとうに男は、夜の軽便鉄道の、
小さな黄いろの電燈のならんだ車室に、窓から外を見ながら座っていたのだ。
車室の中は、青いビロードを張った腰掛けが、まるでがら明きで、向うの鼠いろのワニスを塗った壁には、真鍮の大きなぼたんが二つ光っている。
すぐ前の席に、ぬれたようにまっ黒な上着を着た、小柄な女の子が、窓から頭を出して外を見ているのに気が付いた。
そしてその女の子の肩のあたりに垂れた黒い髪が、どうも見たことのあるような気がして、そう思うと、もうどうしても誰だかわかりたくて、たまらなくなった。
いきなりこっちも窓から顔を出してみると、
向かい合った女の子が驚いた顔をしてから、にこっと笑った。
それは女だったのだ。
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