61:みの ◆hetalol7Bc[sage]
2012/08/28(火) 19:31:11.38 ID:bOaug2Ec0
十、ジョバンニの切符
「もうここらは白鳥区のおしまいです。ごらんなさい。あれが名高いアルビレオの観測所です。」
窓の外の、まるで花火でいっぱいのような、あまの川のまん中に、黒い大きな建物が四棟ばかり立って、
その一つの平屋根の上に、眼もさめるような、青宝玉と黄玉の大きな二つのすきとおった球が、輪になってしずかにくるくるとまわっていた。
黄いろのがだんだん向うへまわって行って、青い小さいのがこっちへ進んで来、間もなく二つのはじは、重なり合って、
きれいな緑いろの両面凸レンズのかたちをつくり、それもだんだん、まん中がふくらみ出して、
とうとう青いのは、すっかりトパースの正面に来たので、緑の中心と黄いろな明るい環とができた。
それがまただんだん横へ外れて、前のレンズの形を逆に繰り返し、とうとうすっとはなれて、
サファイアは向うへめぐり、黄いろのはこっちへ進み、また丁度さっきのような風になった。
銀河の、かたちもなく音もない水にかこまれて、ほんとうにその黒い測候所が、眠っているように、しずかによこたわったのだ。
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