68:みの ◆hetalol7Bc[sage]
2012/08/28(火) 19:50:01.73 ID:bOaug2Ec0
「あら、ここどこでしょう。まあ、きれいだわ。」
青年のうしろにもひとり、十二ばかりの眼の茶いろな可愛らしい女の子が、
黒い外套を着て青年の腕にすがって、不思議そうに窓の外を見ているのだった。
「ああ、ここはランカシャイヤだ。いや、コンネクテカット州だ。いや、ああ、ぼくたちはそらへ来たのだ。
わたしたちは天へ行くのです。ごらんなさい。あのしるしは天上のしるしです。もうなんにもこわいことありません。
わたくしたちは神さまに召されているのです。」
黒服の青年はよろこびにかがやいてその女の子に言った。
けれどもなぜかまた額に深く皺を刻んで、それに大へんつかれているらしく、無理に笑いながら男の子を男のとなりに座らせた。
それから女の子にやさしく女のとなりの席を指さした。
女の子は素直にそこへ座って、きちんと両手を組み合せた。
「ぼくおおねえさんのとこへ行くんだよう。」
腰掛けたばかりの男の子は顔を変にして燈台看守の向うの席に座ったばかりの青年に言った。
青年は何とも云えず悲しそうな顔をして、じっとその子の、ちぢれてぬれた頭を見た。
女の子は、いきなり両手を顔にあててしくしく泣いてしまった。
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