76:みの ◆hetalol7Bc[sage]
2012/08/28(火) 20:25:12.02 ID:bOaug2Ec0
「ありがとうおじさん。おや、かおるねえさんまだねてるねえ、ぼくおこしてやろう。
ねえさん。ごらん、りんごをもらったよ。おきてごらん。」
姉はわらって眼をさましまぶしそうに両手を眼にあててそれから苹果を見た。
男の子はまるでパイを喰べるようにもうそれを喰べていた、また折角剥いたそのきれいな皮も、
くるくるコルク抜きのような形になって床へ落ちるまでの間にはすうっと、灰いろに光って蒸発してしまうのだった。
二人はりんごを大切にポケットにしまった。
川下の向う岸に青く茂った大きな林が見え、その枝には熟してまっ赤に光る円い実がいっぱい、
その林のまん中に高い高い三角標が立って、森の中からはオーケストラベルやジロフォンにまじって何ともいえずきれいな音いろが、
とけるように浸みるように風につれて流れて来るのだった。
青年はぞくっとしてからだをふるうようにした。
だまってその譜を聞いていると、そこらにいちめん黄いろやうすい緑の明るい野原か敷物かがひろがり、
またまっ白な蝋のような露が、太陽の面を擦めて行くように思われた。
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