過去ログ - ビッチ
1- 20
103:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/09/07(金) 23:39:34.32 ID:FR2r4LMjo

第二章 明日香


 奈緒さんという子はいったいどういう意図で兄貴に好意を示しているのだろう。

 あたしは兄貴があの子と二人で一つの傘に入って寄り添って歩いているのを目撃して
から、ずっとそのことだけを考えてきた。

 鈴木奈緒。富士峰女学院中等部二年でピアノコンクールの少なくとも地方のコンペでは
常連の入賞者。いわゆるお嬢様だ。

 彼女が歩いていると、もういい年のおじさんも含めた周りの男たちが奈緒の方をちら
ちら盗み見る。

 それほど整った容姿の奈緒。

 奈緒自身は周りの男の視線に気づいているのか気がついていないのかよくわからない。

 少なくとも自分の顔や体を舐めるように見つめる男の視線のことは全く気にしていな
い様子ではあった。



 あたしは奈緒がうちの兄貴、奈緒人の実の妹であることを以前から知っていた。



 多分兄貴はパパがうちのママと再婚する前のもともとの家庭のことは何も覚えていな
い。無駄に頭が良くて両親や教師に受けがいい兄貴にも、記憶力だけはあまり備わって
いないのだ。

 あたしはこれまで兄貴にはいい感情を抱いたことはなかった。

 あたしはママの愛情を独り占めして育った。でもいつの間にかあたしには兄貴ができ
ていた。そして一緒に暮らしているうちにその兄貴はママの愛情をあたしから奪って行
ったのだ。

 去年、真面目な顔をした両親はあたしたち兄妹に初めて事実を告げた。

 曰く。

 パパとママはお互いにバツイチで互いの子どもを連れたまま再婚した。だから兄貴と
あたしには血の繋がりはない。

 それを聞かされた兄貴は一時期相当悩んでいたようだ。間抜な兄貴はこの家庭が本物
の家庭で、あたしとも実の兄妹だと思い込んでいたのだろう。

 あたしには別に意外な話ではなかった。いつのまにかできていた兄貴。いつのまにか
前にいた人と変わっていた新しいパパ。あたしには昔からよくわかっていた。こんなこ
とで今さら驚く兄貴の方が愚かなのだ。

 あたしはそう考えた。あたしの兄貴に対する嫌悪感は両親の告白前と別に変化したわ
けではなかった。兄貴に対する嫌がらせは前と同じでチャンスがあれば積極的に仕掛け
てやった。

 ただその成果は出なかった。いくらあたしが兄貴に対するパパとママの信頼を失わせ
ようとして頑張っても、両親は兄貴を慈しむように眺めて苦笑するだけだった。どうせ
明日香のいたずらでしょ。

 あたしには両親の間の会話が聞き取れるようだった。

 でも今では事情が異なる。

 兄貴のことが嫌いだとかはどうでもいい。これ以上あの人たちにはあたしの家庭にち
ょっかいはかけさせない。ましてその原因を作った女の娘である奈緒なんかには。

 奈緒が兄貴のことを実の兄だと知っていて何らかの悪意を持って兄貴に接近したの
か、それとも悲劇的な偶然で実の兄貴と仲良くなったのかはいまいち判然としなかっ
た。

 でもそのどちらの場合であっても真実が明らかになれば傷付くのは兄貴だった。

 あたし以外の女には兄貴を傷つける権利なんかない。

 あたしは奈緒と兄貴の付き合いを邪魔することに決めた。それにしても必用な情報を
仕入れておかないといけないだろう。

 とりあえず玲子叔母さんに会いに行こう。

 あたしはそう考えた。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
1002Res/1204.35 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice