過去ログ - ビッチ
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130:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/09/10(月) 23:46:40.12 ID:Rc4G2L0yo

 物凄い偶然によって奈緒と兄貴が互いに兄妹であることを知らないまま、ただの男女と
して出会ったという可能性もないわけではない。そして実の兄とは知らずに兄貴を好きに
なったビッチの奈緒が兄貴を誘惑したという可能性だ。

 でも兄貴は奈緒に一目ぼれされるようなイケメンでは全然ない。そう認めるのは悔しい
けれど奈緒の容姿を考えると奈緒が無条件であのキモオタの兄貴を積極的に誘惑するほど
兄貴に惹かれるとは到底思えなかった。

 そしてここであたしは前に悩んだことを思い出した。事実としては叔母さんの言うとお
り、奈緒は兄貴のことを知っていて兄貴と接触したのかもしれない。

 でもその意図は叔母さんの言うように幼い頃に両親の事情で引き裂かれた兄貴に会いた
いということではなくて、実の兄貴と知りながら自分のことを妹だと知らない兄貴を誘惑
しようとしたならどうだろう。それなら奈緒の兄貴への親密かつ積極的な密着ぶりも理解
できるのではないか。

 偏見もあるのかもしれないけど、兄貴と寄り添っていた奈緒はあたしにはビッチにしか
見えなかった。その動機はよくわからない。けれども何らかの理由で奈緒が生き別れた兄
貴を恨みに思っていたとしたら。

 自分に恋させて残酷に笑いものになるようなくらい手ひどく振るというのは効果的な復
讐だ。

 そしてもっと酷いのは自分に夢中にさせた兄貴に対して自分が実の妹であることを告白
することだった。そうされた場合の兄貴のダメージは計り知れないほどだったろう。

 でもあたしはその考えを叔母さんに話す気はなかった。

 叔母さんはやがて寂しそうに言った。

「それにしても奈緒人君は可哀そうだよね。少なくとも奈緒ちゃんは一年に二回結城さん
に会えていろいろ甘やかしてもらっているみたいだけど」

「何でよ? 兄貴の本当のお母さんだって兄貴と年に二回面会できる権利があるんでし
ょ」

「あの人はその権利を行使したことは一度もないのよ。だから奈緒人君は本当のお母さん
と離婚以来会ったことがないの」

 そういわれて見れば兄貴が昔から一日どっかに出かけるなんてことはなかった。

「だから奈緒人君は去年結城さんたちに教わるまで自分が姉さんの本当の子供じゃないっ
てことは知らなかったと思うよ。逆に奈緒ちゃんは昔から結城さんと面会してたからその
ことを知っていたわけね」

「・・・・・・何で兄貴の実のお母さんは奈緒人と会いたくなかったのかな」

 あたしはそっと言った。

 兄貴もかわいそうな人だったんだ。叔母の話を聞いてこれまで感じたことのなかったよ
うな兄貴への同情とか慈しみのような感情があたしの中から湧き出していた。

「さあね。あたしにはそこまではよくわかんないや」

 叔母が答えた。


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