14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/08/29(水) 23:17:25.47 ID:ogCHSW01o
学校の最寄り駅に着いて電車を降りる頃には突然の雨はもう止んでいた。その雨は天
気予報のとおり突然集中的に振り出し突然降り止んだようだ。
これが夏ならこういうこともあるだろうけど、十二月もそろそろ終るこの季節にこう
いう天気は珍しい。でも夏と違って雨の後に晴れ間が広がったりはせず、天気は雨が降
り出す前の暗い曇り空に戻っただけだった。
僕は閉じたままの傘を抱えて学校に向う緩やかな坂道を歩き出した。
確かに嫌な天気だったけど、あそこで突然に強い雨が降り出さなければ僕があの子を
傘に入れて駅まで寄り添って歩くこともなかった。
今思い出そうとしても今朝出会った少女の顔ははっきりと思い浮んではくれなかっ
た。無理もない。最初にこちらを驚いたように振り向いた時以外は僕は彼女の顔を直視
できなかったのだから。
それでも僕は名前すら知らない少女に惹かれてしまったようだった。ただその甘い感
傷の底の方にはひどく苦い現実が隠されていたことにも気がついてはいた。
いくら僕がさっき出合った少女に惹かれようがその想いには行き場がないのだ。僕は
彼女の名前も年齢も学校も知らないまま彼女と別れたのだから。
時折思うことだけど、僕がこんなに内向的で自分に自信のない性格でなければ、例え
ば同級生の兄友のように相手の女の子にどんなにドン引きされても図々しくメアドを交
換しようとか積極的に言えるような性格なら、ひょっとしたら今頃僕は今朝出合った少
女のアドレスを手に入れていたかもしれない。
そして僕がそういう社交的で積極的な性格に生まれていたら、ひょっとしたら妹との
関係だって今とは違っていたかもしれない。あの妹だって理由もなしに僕のことを毛嫌
いしているわけではないだろう。多分うじうじしていてはっきりしない僕の性格を妹は
心底嫌っているのだろう。
でもそれは考えても仕方のないことだった。
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