143:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/09/16(日) 00:50:47.87 ID:g/BzIvsyo
僕は足を早めた。これで終るなら終わるだけのことだ。僕は確かにナオに惹かれていた
し彼女と付き合えて嬉しかったけど自分のポリシーを曲げてまでナオの機嫌を取る気はな
かった。
もう後ろを振り向かずに寒々とした曇り空の下を歩いていく。やはり見慣れない街のは
ずだけど迷う気は全くしなかった。もう駅がその姿を見せていた。
考えてみればナオには今日兄友と女さんと一緒に遊ぼうと誘っただけで待ち合わせ場所
も待ち合わせ時間も話していない。僕がこのままナオがついてこない間に改札を通ってし
まえば今日はもうナオとは会えないのだ。
兄友と女さんが僕を責める言葉が聞こえてくるようだった。兄友なら僕のポリシーなん
てどうでもいい、一言ナオに謝るだけじゃないかと僕を責めるだろう。そして女友さんは
取り残されたナオちゃんが可哀そうとか言うに違いない。
僕は息を呑んだ。これが初めてできた僕の彼女との別れになるかもしれない。
今からでも遅くない。振り返ってナオのところまで行ってごめんといえば、僕には二度
とできないかもしれない可愛い彼女と仲直りできるかもしれない。
でも僕はそうしなかった。僕はパスモを取り出して改札口から駅の中に入ろうとした。
その時背後に軽い駆け足の音が響いてそれが何かを確かめるよリ前に僕は後ろから思い
切り抱きつかれた。
「ごめんなさい」
泣き声交じりのナオの声が僕の顔の間近で響いた。
「ナオトさん本当にごめんなさい」
僕は抱きつかれた瞬間に力を込めてしまった全身を弛緩させた。
「・・・・・・どうしたの」
僕の背中に抱きついたナオが泣きじゃくっている。
「ごめんなさい。怒らないで・・・・・・お願いだからあたしのこと嫌いにならないで」
「どうしたの」
さすがに僕も驚いてナオに聞いた。
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