過去ログ - ビッチ
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167:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/09/22(土) 23:48:09.07 ID:f/e6iMFao

 イブもクリスマスも兄貴は家にいた。別に奈緒と約束がある様子でもなく普通に家で過
ごしていた。今ではイケヤマと別れたあたしも別に用事はなかったので、世間が浮かれて
いるその日もあたしも兄貴も普段と同じように家にいた。

 ・・・・・・つまり両親の帰宅が遅い家でお互いに自分の部屋にこもって別々に過ごしたのだ。

 一応ママがいなかったのであたしは簡単な夕食を用意した。イケヤマと別れて遊ぶのを
止めてから、ママの帰宅が遅いときにはあたしは兄貴とあたしの夕食を用意するようにな
っていた。それはママを喜ばせることになったのだけど、兄貴がどう思っていたかはよく
わからない。あいつはいつもあたしの用意した食卓を戸惑った様子で眺めていただけだっ
たから。



 クリスマス明けの二十六日は土曜日だった。クリスマスに奈緒と約束がなかった兄貴の
ことだから、あたしは兄貴は土日も家で過ごすのだろうと何となく思っていた。

 この考えは甘かった。あたしが十時ごろ目を覚ますと両親も兄貴も家にはいなかったの
だ。

 完全に油断した。友だちの少ない兄貴が週末に外出なんで奈緒関係以外は考えられない。

 あたしは急いで身支度をした。もちろん前と違って少しだけフェミニンで少しだけ真面
目系のお洒落をして。

 あたしはとりあえず兄貴を探すつもりだった。もちろん闇雲に探したって兄貴たちを見
つけられるはずはない。でもあたしには心当たりがあった。

 あの日、奈緒がピアノ教室から出てきてイイダたちに絡まれたのは土曜日の昼過ぎだっ
た。多分土曜日のあの時間までピアノのレッスンがあるのだろう。

 あたしは足早に駅の方に歩いて行った。とりあえずピアノ教室のそばで奈緒を待ってい
ればいい。どこで兄貴と待ち合わせしようと奈緒を見つけて後を付けていけば兄貴との待
ち合わせ場所に連れて行ってもらえるはずだった。

 一度だけ酔って歩いただけの住宅街だったから、あたしは教室を見つけるのに相当苦労
した。この街並みはまるで迷路のようだ。それでもあたしは時間前に何とか以前来た場所
に辿り着くことができた。

 まだ少し早いのか教室の扉は固く閉ざされていたけど、家の中からはかすかにピアノの
音が響いている。

 あたしは少し離れた目立たない場所で奈緒が出てくるのを待った。多分もう少しのはず
だ。

 その時、あたしはピアノ教室の前で姿を隠す様子もなく立っている男に気がついた。金
髪とピアス、Tシャツにルーズなジーンズ。無骨なチェーンのブレスレット。無愛想な強
面顔。

 それはイケヤマだった。

 考えて見ればあいつがここにいることに不思議はない。イケヤマは律儀にあたしとの約
束を守って奈緒を自分の女にするためにここで彼女を待っているのだろう。こいつはこの
先どうするつもりなのだろう。正攻法で奈緒に声をかけて誘うつもりなのだろうか。

 イケヤマには悪いけどこれだけ柄の悪い男にあの奈緒が着いて行くはずはなかった。そ
れならここで奈緒を待ち伏せして彼女を着けて行くつもりなのだろうか。そしてどこか人
気の無いところに出るチャンスをうかがって奈緒に無理矢理言うことを聞かせるつもりな
のかも知れなかった。

 そもそもそうしてもいいよと唆したのはあたしだけど、それにしてもこんな一目につく
ところで堂々と待つなんてこいつはいったい何を考えているのか。犯罪まがいというか犯
罪そのものを仕掛けるつもりならもっと慎重にやれよ。

 あたしは心の中でイケヤマを罵った。


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