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170:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/09/22(土) 23:50:53.88 ID:f/e6iMFao

 その時、信じられないことにユキが笑顔でイケヤマに返事をしている姿が目に入った。
それは別にイケヤマを警戒するでもなく自然な可愛らしい笑顔だった。

 あたしは一瞬自分の目を疑った。実はイケヤマはすごく女の子受けするのだろうか。確
かにケバイ先輩の女の子たちにはもててはいた。でも目の前にいるユキはそういう先輩た
ちとは違う世界で育って来たはずだ。そんな子にまで通用するほどイケヤマってイケメン
だったのか。

 しばらく前までこいつの彼女だったあたしにだって、イケヤマがそんな魅力を持ってい
たとは気がつかなかったのに。

 イケヤマは笑顔のユキに向って再び何か話し出した。今度はユキは本気で笑い出してし
まった。しばらくしてやっと笑いやんだユキは何かをイケヤマに聞いているようだ。イケ
ヤマが今度は真面目顔になってユキを見つめて何かを話している。ユキも真面目な顔でそ
れを聞いている。ユキの表情には恐れとか驚きとかは全く感じられなかった。

 やがてイケヤマはユキに手を振ると駅の方に向かって一人で帰って行ってしまった。ユ
キは立ち止まったままでじっとイケヤマの姿が消えて行くのを眺めていた。


 やがてゆっくりと歩き始めたユキの後をつけながらあたしは考えた。

 イケヤマにはあたしが思ってもいなかったくらいに女の子を惹きつける魅力があるらし
い。今のユキの反応を見るとそれは認めざるを得なかった。多分今まで大切に育てられて
きただろうユキにとってはイケヤマなんかゲームに出てくるモンスターのようなものだ。
それだけ異質な異性にあれだけ心を許した笑顔を見せるなんて普通なら考えられない。

 あたしは前にイケヤマの友だちのカップルと一緒にカラオケで遊んだことを思い出した。

 あの時は兄友さんや女さんが兄貴の同級生なんてまだ知らなかった時期のことだ。

 兄友さんは小学生の頃からのイケヤマの親友だということだったけど、別にイイダたち
みたいな柄の悪い人ではなかった。兄友さんと女さんは兄貴と同じ明徳に通っているとの
ことだった。

 その時に兄友さんから聞いた言葉だけど、彼はイケヤマは見かけと違って常識的でいい
やつだと何度も言っていたっけ。あたしはそれを真に受けたわけではなかった。

 それに正直隠しているつもりだろうけど女さんがあたしとイケヤマのことを見下して嫌
っていることに気がついたあたしはその場では相当愛想のない態度を取っていたに違いな
い。

 そんな時に兄友さんはイケヤマのことを誉めたのだった。

「明日香ちゃん、イケヤマは本当にいいやつだからさ。嫌わないでやってくれよな」

 半分冗談のように兄友さんはあたしに言った。イケヤマは照れているのを隠しているつ
もりか無表情で次の曲を選んでいる。兄友さんの彼女はどうでもいいというようにオレン
ジジュースを飲んでいる。

「イケヤマってさ見た目はよくないけど、こいつがつるんでるようなやつらと違って普通
にいいやつだからさ」

 兄友さんは笑って言った。


 その時あたしは何であたしの彼氏が兄友さんじゃなくてイケヤマなんだろうと思って、
そしてそう思ったことに対してどきどきしたことを覚えていた。同時に兄友さんの彼女に
対しては憎しみしか感じなかった。多分あたしは女さんに見下されているのを感じ取った
からだろう。兄友さんに妙に惹かれた分、あたしは女さんのことが大嫌いになったけど、
それを表情に出すほどあたしは子どもではなかった。


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