179:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/09/24(月) 23:53:13.20 ID:iCwr9AuZo
駅を出たユキの進んでいく方向はどこまでもあたしの帰宅する道と同じだった。
見慣れた住宅街の土曜日の午後の曇り空の下をユキは歩いていく。このままいったら五
分くらいであたしの家に着いてしまう。マジで同じ住宅街に住んでいたのか。
あたしとユキの距離はだいぶ詰まってきていた。そして静かな住宅街にはほとんど人通
りがなかった。本当に何をやっているんだろう、あたしは。今ごろは兄貴と奈緒がどこに
行くのか確かめているはずだったのに。あたしは思わずため息をついた。
そのときユキが突然後ろを振り向いた。間には誰もいない。ユキとあたしの視線がぶつ
かった。
思わず目を逸らし損ねたあたしは思い切りユキを睨みつけるような感じになってしまっ
た。すぐにでも目を逸らして引き返さばよかったのかもしれないけど、どういうわけかあ
たしは反射的にユキに話しかけていた。
「ねえ、ちょっといい?」
渋谷駅の交差点前でスカウトしている怪しい男じゃあるまいし、もう少しましな声のか
け方もあったと思うけどこのときは本当に無自覚のまま声が出てしまったのだ。
「・・・・・・はい?」
戸惑ったようにユキが返事をした。突然のハプニングだったけどもともとしようと思っ
ていたことだ。あたしは心を決めた。
「突然ごめんね。ちょっとお話してもいい?」
あたしはできるだけ大人しい声を出すように努めた。それでなくても外見ではユキに警
戒されても仕方ないのだ。せめて言葉遣いには気をつけよう。
「あ、はい。何でしょう」
思っていたより好意的な表情でユキが言った。あたしは一瞬拍子抜けしたけどすぐに気
がついた。
そうだ。今のあたしの外見は全然ギャル風じゃないんだった。むしろ大人し目の格好な
のだ。どちらかというと奈緒やユキの方に近い。だからユキもそれほど警戒していないの
だろう。あたしは少し気が楽になった。
「あなたユキちゃんでしょ。結城ナオトって知ってるかな?」
あたしは少し大胆に賭けてみた。知らないと言われればそれで終わりだった。でもユキ
は驚いたように目を丸くした。
「知ってます。でもあなたは?」
「あたしはナオトの妹なの。明日香っていうんだ。よろしくね」
どういうわけかあたしが兄貴の妹だと名乗った途端にユキの態度が明らかに柔らかくな
った。ナオトは自分の彼氏でもないのに何でだろうか。
「わあ、びっくりした。ナオトさんの妹さんですか。あたしは藤咲ユキっていいます。初
めまして」
どういうわけか目を輝かせてユキがあいさつしてくれた。
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