182:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/09/24(月) 23:57:32.29 ID:iCwr9AuZo
「ナオトさんにお願いしてメールのアドレスも聞いちゃいました」
ユキは聞かれもしないのに兄貴に会った話を続けた。わずか数分の間あの兄貴に会った
り兄貴のメアドを聞いたくらいでここまで嬉しいものなのか。あたしには理解できなかったけ
れど、ユキはもうあの夜のことや今日イケヤマに会ったことさえ忘れたように兄貴の話を続
けた。
「あたしは彼氏なんていたことないし、多分奈緒ちゃんも初めての彼氏だと思うんですけど、
最初の彼氏がお兄さんなんてラッキーですよね」
ユキは羨ましそうにそう言って話を締めくくった。
「兄貴っだって女の子と付き合うのなんて初めてだし、趣味はアニメを見るくらいしかない暗い
オタクなんだよ」
あたしは試しにユキに言ってみた。
「アニメとかってよくわからないけど、でもお兄さん優しそうでした」
あたしの兄貴への評価が不満なのかユキは反論するように少し語気を強めた。
あの兄貴がここまでユキに気に入られるとは意外だった。その時あたしはいい考えを思いつ
いた。
もともとユキに話しかけたのはイケヤマのバカが何を話したかを聞き出すのと、ユキの友だち
である奈緒が普段はどんな女なのかを聞きだそうとしたためだった。特に奈緒がどういう女なの
か知り合いから客観的に聞いてみたかった。
でも考えてみればたとえ奈緒が性格の悪いビッチだったとしてもそんなことを初対面のあたしに
奈緒の友だちであるユキが喋るはずはないだろう。確かにユキは口が軽そうな感じだけど、それ
にしてもいきなり友だちのことを悪く言うはずがない。
そんなことを知ることより今あたしの頭の中に思いついた考えの方が悪くないのではないか。
イケヤマにはきちんと指示し直して当初の目論見どおりユキではなく奈緒の方を狙わせる。
そして兄貴に対してはこのあたしがもっと本気で誘惑してみる。
でも最近のあたしの必死のアプローチに対して兄貴は引き気味だった。あたしにはどうしても
納得できなかった。今のあたしは時々は地が出てしまうこともあったけど、基本的には容姿も性
格も喋り方も兄貴好みにしているつもりだった。
それなのに兄貴は奈緒に夢中であたしのことを気にする様子すらない。あたしは奈緒に女とし
て負けているとは思いたくなかった。多分兄貴はあたしたちが血は繋がっていなくても兄妹である
ことを気にしているのかもしれない。あたしと兄貴が結ばれたとき両親がどう考えるかとかそんな
ことを考えてしまうのだろう。
本当はそれは兄貴の杞憂なのだった。あたしは知っていた。あたしは昔、半ば冗談のような口
調でママからよく聞かされていた言葉を思い出した。
「明日香はお兄ちゃんのこと好き?」
「大きくなったら奈緒人のお嫁さんになりたい?」
「そうよ。お兄ちゃんがパパで明日香がママになったら楽しいでしょ」
あたしは兄貴とは血が繋がっていないことを知っていたから、幼いながらもママが言っていた言葉
の意味は何となくわかっていた。あれが子供相手の冗談でないなら、両親のことを気にして兄貴が
あたしのことを妹だから好きにならないように努力するなんてことは間違っている。
いろいろ紆余曲折があって普通より複雑な経緯を経てようやく幸せな家庭を築くことができたパパと
ママは、兄妹がずっと仲良く自分たちと一緒に過ごすことを望んでいたのかもしれなかったのだ。
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