215:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/09/29(土) 00:15:01.93 ID:0rMHkqmno
僕は今では完全に目が覚めていたけど、父さんと玲子叔母さんの会話を聞きたくて寝た
振りをしていた。罪悪感はあったけど父さんが僕たちのことをどう考えているかなんて直
接聞いたことがなかったので、僕の中で好奇心が罪悪感に打ち勝ったのだった。
「そんなの関係ないじゃん。だいたい結城さんとこの雑誌ってクラッシクの専門誌でし
ょ? 本当にこの時期そんなに忙しいの?」
「また馬鹿にしたな。零細誌は零細誌なりにいろいろあるんだよ」
「あ・・・・・・」
「どうした?」
「そういや結城さんの『クラシック音楽之友』の先月号読んだんだけどさ」
「どうかした?」
「ジュニクラの都大会の記事書いたのって結城さん?」
「そうだよ。ピアノ部門だけだけど」
「中学生の部の優勝者の批評って・・・・・・」
「おい。ちょっと、それは今はまずいよ」
「・・・・・・大丈夫。二人ともよく寝てるから。あの記事ちょっと恣意的って言うか酷評し過
ぎてない?」
「・・・・・・」
「カバンに入ってたな、確か・・・・・・ああこれだ」
『中学生離れした正確でミスタッチのない演奏だが感情表現の乏しさは、まるでシーケン
サーによる自動演奏を聴いているかのようだ・・・・・・。同じ曲を演奏して第二位に入賞した
藤咲有希は技術的には鈴木奈緒に劣っていたし改善すべき点も多いが、演奏の感情表現に
関しては彼女の方が将来に期待を持てるかもしれない』
「・・・・・・これって酷すぎない?」
「感じたままを書いたんだけどな」
「別に無理に奈緒ちゃんを酷評する必要なんかないのに」
「別に無理にとかじゃないよ。正確に感じたことを書かないとね。あの時の一位と二位の
受賞の結果は正しい。でも将来性に関しては藤咲の方が楽しみだというのがあの記事に趣
旨だよ」
「何かさあ」
「うん」
「大学時代に先代の佐々木の婆さんがさ」
「・・・・・・ああ」
「結城さんの前の奥さんの演奏に対してよく注意してたじゃん。演奏のふり幅が少なくて
感情が表現できていないって。メトロノームが演奏してるんじゃないのよ、ってさ」
「・・・・・・」
「あれと同じじゃん。結城さんの批評ってさ」
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