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216:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/09/29(土) 00:18:12.33 ID:0rMHkqmno

 僕の彼女のことを父さんと叔母さんは知っているみたいだった。僕は女さんからもらっ
たWEBのコピーを思い出した。



『東京都ジュニアクラッシク音楽コンクールピアノ部門中学生の部 受賞者発表』

『第一位 富士峰女学院中等部2年 鈴木奈緒』

『演目:カプースチン:8つの演奏会用練習曲 作品40 第5番「冗談」』

『表彰状、トロフィー、記念品、賞金30,000円の贈呈』



 父さんの雑誌の批評はこの時のナオの演奏に関するものらしかった。二人ともこのとき
優賞したナオが今では僕の彼女だということを知らない。それでも仕事柄父さんはナオの
ことを批評記事の対象としてよく知っているようだった。

 父さんの仕事がクラッシク音楽の雑誌の編集である以上、こういうことがあっても不思
議はないのだけど、それにしても父さんのような職業で音楽を聞いている人に注目される
ほどナオは有名だったのだ。

 寝たふりをしていたけどナオの話題を聞いて今では完全に目が覚めていた僕は、二人の
会話の中で気になることがあることに気がついた。


『別に無理に奈緒ちゃんを酷評する必要なんかないのに』


 この叔母さんの言葉はどういう意味なのだろう。どうして父さんが無理にナオのことを
酷評する必要があるのだろうか。父さんは職業の必要上から都大会のピアノ部門中学生の
部の優勝者の批評記事を書いただけではないのか。


 それから僕は初めて自分の実の母親の情報も耳にしたことになる。


『大学時代に先代の佐々木の婆さんがさ。結城さんの前の奥さんの演奏に対してよく注意
してたじゃん。演奏のふり幅が少なくて感情が表現できていないって。メトロノームが
演奏してるんじゃないのよ、ってさ』


 父さんと僕の本当の母さん、それに話からすると玲子叔母さんも同じ大学に通っていた
のだろうか。その母さんも奈緒と同じでピアノの演奏をしていたのだろうか。

 僕はこのとき、閑静な住宅街にあるピアノ教室の玄関を思い出した。今までは気にした
こともなかったけど、あの教室には一枚の看板が控え目に掲示されていた。



『佐々木ピアノ教室』



「それはだな」

 父さんが何かを話し出そうとしたとき、明日香が身じろぎして目を覚まして起き上がっ
た。


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