23:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/08/30(木) 22:23:19.38 ID:r0JYWwd1o
「ああ、偶然だね」
その時僕は彼女に会えたことに驚いて呆然としていたのだけど何とかこの間抜な返事
をようやく口にすることができたのだった。
「偶然じゃないんです」
相変わらず僕に微笑みかけながら彼女は僕の言葉を否定した。
「昨日はちょっと急いでいてちゃんとお礼を言えなくて」
「お礼って・・・・・・傘に入れただけだよ」
「どうしようかと思って困っていた時に、傘に入らないって自然に声をかけてくれて本
当に嬉しかったんです。でもあの時は何か照れちゃってずっと黙ったままだったし」
「だから偶然じゃないんです。ひょっとして同じ時間にここにいればまたお会いできる
んじゃないかと思って」
「じゃあ、わざわざ僕を待っていてくれたの?」
これは恋愛感情ではないかもしれない。でも一度だけそれも十分程度傘に入れた男に
会うためにここまでする必要なんてあるのだろうか。
「はい。無駄かもしれないと思ったんですけど、お会いできて良かったです」
彼女は頭を下げた。「昨日は本当にありがとうございました」
「どういたしまして」
僕も頭を下げた。高校生の男と多分中学生の少女が向かい合って頭を下げあっている
光景は傍から見たらずいぶんと滑稽な様子に見えたに違いない。
多分彼女も同じことを考えていたのだろう。頭を上げた彼女は再び恥かしそうに微笑
んだ。
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