263:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/10/04(木) 23:23:58.79 ID:tJhIMvBio
「うん」
「そう」
ユキはもうおせち料理のことなどすっかり忘れたようだった。そして真面目な表情で言
った。「ナオトさんには納得できないかもしれないけど、彼女と付き合うってそういうこ
となんだよ」
「いや、それは理解しているつもり。納得できないなんてことはないよ。むしろナオちゃ
んって大変なんだなあって思っただけでさ」
「そう・・・・・・。大変だなあって思ったんだ」
「うん」
「それだけ?」
「それだけって・・・・・・どういう意味?」
僕とナオは付き合っているけど普通の恋人同士のように休暇の間会うことすらできない。
むしろ平日の方が登校時や土曜日の一時にナオと会えるだけましだった。ナオは学校のな
い休暇期間中はその全ての時間をピアノに専念すると自分で決めていたから。
そして僕はナオのその決定を邪魔しようとは思わなかった。むしろ邪魔をしてはいけないと
さえ決心したくらいだ。僕と付き合うことによりナオの夢の実現を阻害することになるのなら、
僕は喜んで寂しい思いに耐えるつもりだった。
それにナオは休み中僕に会えないことを、そこまで考えなくてもと思うほど悩んでくれ
てたのだ。僕にとってはそれだけでも十分だった。
「ナオトさんって本当に奈緒ちゃんのこと好きなの?」
ユキが顔を上げ僕を見た。
「好きだけど、でもそれそこどういう意味で聞いてるの?」
僕は同じ言葉を繰り返した。ユキが何を言いたいのかよくわからなかったのだ。明日香
や僕のためにおせち料理や年越し蕎麦を何とかしてあげましょうかと言ってくれたさっき
までの柔らかな態度のユキとはまるで別人のようだ。
「好きな子のことならさ、普通はもっと気になるんじゃないの?」
「え」
「休み中はピアノの練習が忙しいからって奈緒ちゃんに言われて、理解のある優しい彼氏
は気にするなよって彼女に言ってあげてさ。そして優しい自分に自己満足してるってわ
け?」
「そんなことはないよ」
「それで休みの日は妹の明日香とかあたしとかで適当に時間を潰してるのね」
・・・・・・いくらなんでもこれはひどい。僕だってナオに会いたい気持ちはあるのにそれを
我慢しているのだ。
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