274:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/10/06(土) 22:54:31.20 ID:XUDIxlOTo
大晦日の深夜、僕は明日香と二人で初詣でに出かけた。いわゆる二年参りというやつだ。
明日香が言うところでは大晦日の十時ごろ出かけて新年の早朝には家に戻る予定らしい。
大晦日には家に戻って来る予定だった両親からは何の連絡もないし、まとろな年越し蕎
麦すら用意できず微妙に苛立っていた様子だった明日香は、大晦日の深夜に半ば無理矢理
僕を家から連れ出したのだった。
とりあえず明日香がデパートの地下の食品売り場で何とか揃えてきたそれらしい料理と
か、コンビニで買えたぱさぱさの蕎麦でも十分に満足だった僕としては、もう今日は自分
の部屋でゲームをしていてもよかったのだけど、明日香にとっては大晦日は何かのイベン
トが起こらないと納得できない特別な日のようだった。
行き先はこの日は早朝まで終電に関係なく運行している電車に乗って三十分はかかる場
所だった。
僕たちは最寄の駅から深夜の電車に乗り込んだ。普段なら絶対に電車なんかに乗ってい
ない時間に外出しようとしているだけでも何か特別なことをしているような気になる。こ
んな時間なのに電車はまるで朝のラッシュ時にように混み合っていたけど、晴れ着を着た
女の子の華やかな姿が見られたせいで、さっきまで結構悩んでいた僕まで少し華やかな気
分になっていった。
この時間だけはナオと会えないことやユキの不可解な告白を忘れて、明日香のことを考
えてやらなければいえないのかもしれないとその時僕は考えた。ナオに会えないのは何よ
り寂しいけどユキに偉そうに話したとおり、僕はユキのその選択に納得していたはずだ。
それに長い休暇もいつかは終る。学校が始まればまた毎朝ナオと会うことができるのだ。
それに明日香は今年も例年のように自分の友だちと外出するのだろうと僕は思っていた。
でも明日香は自分で宣言したとおり以前の派手な友人だちとは全く会っていないようだっ
た。
考えてみれば一人で過ごすことがあまり苦にならない僕と違って、明日香は誰かと一緒
にいることが好きなようだった。僕のためにいい妹になる宣言をしたせいで友だちを無く
した明日香は、大晦日に寂しい思いをすることになってしまったのだ。
紅白が終る頃になってもう両親から連絡はないだろうと思ったのか、明日香は突然ソ
ファに座って眠りそうになりながらテレビを見ている僕を外に連れ出した。明日香に気を
遣った僕は半ば無理矢理家の外に連れ出されながらも、こいうのも気晴らしとしては悪く
ないなと考えていた。
深夜の電車の中で楽しそうに笑いさざめく晴れ着姿の女の子たち。車窓を流れる高層ビ
ル街のきらめく夜景。
そして僕の隣には何となく不満そうな顔をした明日香がいる。明日香は以前のようなケ
バい格好はしなくなっていた。そのせいもあって周囲の華やかな着物姿の少女たちに比べ
るとだいぶ地味な容姿に見える。
でもそれは明日香のせいではない。着物なんて母さんが不在の家で明日香が一人で引っ
張り出せるものではないし、着付けだって助けなく自分でできるものではないのだ。両親
が不在では、周囲で笑いさざめいている少女たちが普通にできることも明日香にとっては
望むべくもない。
そう考えると僕は自分の妹が少しだけ不憫に思えてきた。ナオやユキのような幸せな家
庭に育った少女たちなら与えられて当然なことさえ、両親が共働きで多忙な我が家では明
日香には期待することさえ許されていないのだから。
明日香は周囲の女の子たちを気にしている様子はなく、普通にチャコール色のコートを
着て僕の腕に掴まっていた。そして今日のこのときだけは、僕は妹の手を振り払う気はな
かった。
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